お題小説
□「 Taxi 」
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家の近くでタクシーが止まり、お金を受け取ったあと運転手は車から素早く降りた。
そして帽子を脱ぎ後頭部のドアを開け、頭を下げると
「お待たせいたしました」
と言って私の方を見た。今までのタクシーは自動ドアで、こんな扱いをされた事がなかった私は感激して
「ありがとうございました」
と言って運転手の方を見ると、そこにいたのは信じられない事に幼なじみの彼だった。
酔っていた私は運転手をよく見てなかったし、名前もまるで見ていなかった。
だから、今の今まで気づく事がなかったのだろう。
よく見ると制服のスーツのジャケットには、小さな名札にちゃんと彼の名前が書いてある。
「え?もしかして……」
驚きながらそう聞くと、彼は笑顔を見せて
「久しぶり。やっと気づいたか? 」
と言い、頭を上げた。久しぶりに会った彼は人なつっこい笑顔で、端正な顔立ちを私に向けてそこに立っていた。
母親から彼がどんな仕事をしているのか聞いていたような気がしたけど、覚えていなかった。
ちゃんとわかっていたらもっと早くに、会えたかもしれないのにと思うと悔しくなる。
「う、うん。だけど気づいてたら聞けばよかったのに」
タクシーから降りながらそう話す。
乗った時に聞いてくれたら、いろいろ話せたのにと思うと自分の鈍さに情けなくなった。
「いや、人違いだったら困るだろ? お客さんには迷惑をかけられないからな。それにしてもお前、大きくなったな」
そう聞いて納得したけど、子供扱いされたように感じてカチンときた。 同じ年なのに、中学までは会っていたのに大きくなったなんて。
「そう?大人になったの間違いじゃない? そうだ。今度一緒にご飯食べに行きたいな 」
と聞くと彼は頷いてから、それじゃ連絡が取れないと困るからと携帯の電話番号とメールアドレスを交換しないかと話す。
それを聞いてバックから携帯を取り出すと、彼と電話番号とメールアドレスを交換してから
「時間のある時に連絡するね」
そう話してから手を振った。
すると彼は笑顔で、連絡を待ってると言ってタクシーに乗り込むと車を走らせたのだった。
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