短編小説
□『クリスマス・イヴ』
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夏には、アルバイトをして二人で海へ行き、秋には大好きな遊園地に遊びに行って、観覧車に乗るのが楽しみだった。
そして、クリスマスイヴ。街中がクリスマス色に飾られ、デパートではクリスマスソングが流れ、恋人も家族も友達も、クリスマスを楽しもうと、買い物をする人達で溢れていた。
付き合い始めて、初めてのクリスマス。この日は私の中で、きっと忘れる事が出来ないほど、心に残っている。
今までは、イヴが誕生日だからと家族からのプレゼントは一つだったし、ケーキだって年に一回だけ。だけど浩幸はブランドの素敵な財布をプレゼントしてくれて、ケーキは見るからに人気のあるシェフの店のものだった。そして二人っきりで過ごしたいからと、私はまた親に嘘をついた。
その部屋からの夜景は言葉に出来ないほど綺麗でデパート前に置かれた大きなツリーも見えた。部屋の灯りを消すと、そのツリーの灯りだけになって、しばらくの間、私達はそのツリーと夜景を眺めて過ごした。
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