短編小説

□『クリスマス・イヴ』
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まだお互い大学生だった頃、急いで歩いていた私に、勢いよくぶつかってきた中澤浩幸は、私より二歳年上の二十一歳で、長身、少し長めの髪型、優しそうな雰囲気をした私好みの人だった。


ぶつかった瞬間、バックを落とし、おまけに派手に転んだ私は、恥ずかしくて仕方なく顔が熱くなるのがわかり、必死に謝る彼に
「…大丈夫だから…」
と、それしか言えなかった。


「だけど、痛くない?」と立たせてもらいながら聞かれても、あまりの恥ずかしさに片手を振りながら礼を言い、歩き出そうとした時、右足首を捻挫したらしく、歩けそうになかった。


責任を感じた浩幸は、次の日から何かと気にかけて、助けてくれたり、話すようになり、そして三週間後には、信じられない事に告白されて、付き合うようになった。


こんな事があるなんて、まるで夢のようで、この日の事を一体何人の友達に話しただろう。あまりの喜びように友達は、幸せ呆けとか、後で不幸が来るとか、散々言われたけど、何を言われても平気だった。
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