短編小説
□『不安な気持ち』
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と、この三日間で自分が出来る事はしたから、後に残されたのは彼に会う事だった。
どれだけ努力しても、彼の気持ちが離れたままだったら、もう諦めた方がいいのかな、そう思いながら電話をかけたのは、お互いが休日の前の夜の事だった。
* * *
「…そんなに悩んでたの?」
そう言いながら笑っている彼と会えたのは、次の日の事。不安な気持ちのまま電話をすると不機嫌な声で
『じゃ、明日、そっちに行くから』
と聞いていたら、今までの事もあって心配になるのは当たり前の事だと思う。
そんな気持ちを、まるで突風のように飛ばした彼の笑いに、私は訳がわからなかった。
『だって……」
と下を向いて言うと
「あ〜、ごめん。仕事が詰まってて、苛々してたから。」
そう言い、頭をくしゃくしゃっと撫でると、後ろから抱き締められた。
つまり彼は、仕事で忙しくて苛々していて、それで機嫌が悪かっただけで別に気持ちが離れた訳ではないと、そういう事だった。
「だから、その話を聞いて悪いと思ったけど、おっかしくて……」
と言い、抱き締めたまま体を揺らして笑う。