短編小説

□『不安な気持ち』
5ページ/6ページ

と、この三日間で自分が出来る事はしたから、後に残されたのは彼に会う事だった。


どれだけ努力しても、彼の気持ちが離れたままだったら、もう諦めた方がいいのかな、そう思いながら電話をかけたのは、お互いが休日の前の夜の事だった。


  *  *  *

「…そんなに悩んでたの?」
そう言いながら笑っている彼と会えたのは、次の日の事。不安な気持ちのまま電話をすると不機嫌な声で
『じゃ、明日、そっちに行くから』
と聞いていたら、今までの事もあって心配になるのは当たり前の事だと思う。


そんな気持ちを、まるで突風のように飛ばした彼の笑いに、私は訳がわからなかった。
『だって……」
と下を向いて言うと
「あ〜、ごめん。仕事が詰まってて、苛々してたから。」
そう言い、頭をくしゃくしゃっと撫でると、後ろから抱き締められた。


つまり彼は、仕事で忙しくて苛々していて、それで機嫌が悪かっただけで別に気持ちが離れた訳ではないと、そういう事だった。


「だから、その話を聞いて悪いと思ったけど、おっかしくて……」
と言い、抱き締めたまま体を揺らして笑う。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ