短編小説

□『 偶然 @ 』
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検品が済んでから、いろいろ話すようになり、来る度に彼がどんな人なのかを知っていくうちに、段々、気持ちは動いていった。彼ともっと話してみたい、そう考え始めた頃、食事に行かないかと誘われ、同じ事を思っていた私は快く返事をした。


その彼と、食事をしに行く当日。お互い仕事の後に会うため、コンビニからバスで五分もかからないデパート内の、喫茶店で待ち合わせをしていた。


以前の彼の事はまだ、忘れられなかったし、もし、また会えるなら会いたい、付き合えるなら、そうしたいと、一年間ずっと思っていた。


だけどそれは、絶対叶わない事だと嫌でもわかり、諦めていた。そんな事を考えながら、仕事が終わる三十分前にレジの前に立っていると―――


「久しぶりだな。元気か?」
と声をかけられ、驚く。その声はもしかしたら……そう思い、視線を上げると、目の前に一年前に別れた彼が立っていた。

私は何て話しかければいいのかわからず、手が止まったまま、ただ彼を見ていた。
「仕事、何時に終わる?」
そう聞かれて、咄嗟に時間を答えた。すると彼はその時間に迎えに来ると言い、笑顔を見せたのだった。


この時、どうしてここで働いているのかわかったかを、後で聞いたら、言えないけど少し卑怯な方法を使ったと話していた。
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