短編小説

□『 偶然 @ 』
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彼は、退院してきたら会えない、だから別れよう、そうはっきり言ったのは退院して来る前日の事だった。


私は、彼のその言葉に従うしかなかった。不倫や愛人として付き合っていくのは嫌だったし、何より彼を、共有するのが耐えられなかった。


彼と別れた後、私は何も出来なくて無気力になった。仕事も辞めて実家に戻って、ただぼんやりと毎日を過ごした。


家族や友達は心配して、言葉をかけたり、気分転換にドライブに連れて行ってくれた。その間は何も考えなくてよかったから気持ちは楽だったけど、夜にベッドに入ると、とたんに苦しくてたまらなくなる。


そんな時、このままでは駄目と私を引っ張って背中を押してくれたのは、親友だった。彼女がいなかったら、きっとコンビニで働いていなかっただろう。


働く事で仲のいい同僚も出来たし、お客さんともよく話すようになって、以前の自分に戻る事ができた。


そんな中、私は新しく恋をしよう、次へ進もう、そう考えられるようになり、一人の業者の男性と仲良くなっていた。それは、彼と別れてから、一年目の事だった。
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