短編小説

□『 Photo 』
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でも、1年も前だし、持っていると思い出すから捨てたかもしれない。
「どうした?」
探し物をする私に、そう和典が声をかけた時、小さな箱が手に当たった。

「あの日、渡したくても出来なかったけど……今、渡すね。」そう言って、小さな箱を見せる。
「……どうして明日じゃないんだよ、なんで今なんだよ。」
と怒っていたけど、それでも震える手で包みを開けて、和典と交換するはずだったプレゼントを見せた。



和典は、それを見ると泣きそうな表情で
「紗希のプレゼント、わかったから、これで最後かな……。」
と話して、無理に笑おうとした。
「だけど、俺……。」
そう言って、まるで表情を隠すように下を向く。プレゼントを交換したかったけど、持っていない事に気づいたからだと思う。


だけど
「特別なプレゼントを……ここに持ってるから、だから心配しないで。」と、両手を胸に当てながら伝えた。


ここには、2年分の和典との大切な想いや思い出が、数えきれないくらい、たくさん詰まっていた。


すると和典は、ほっとした表情を見せて
「……紗希、ありがとう。」
そう言って、いつも送ってくれた時と同じく、私に背中を向けて、片手を振ってゆっくりと歩いて行ったのだった。



          完
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