短編小説

□『 Photo 』
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だけどさすがに、好きだった人を見たり、まして話しするのは苦しい。まだ、思いが残っている……そう思うと。


高2の記念日、和典は私より早く学校から出て、校門で待っていた。その時、目の前の車道に飛び出してきた犬を車から庇ってぶつかり、そのまますぐ病院に運ばれたと聞いたのは、その日、校門で和典を待っていた時だった。


母からの話を聞いて驚いて、信じられなくて、何も考えられなかった。その後、様子がおかしいからと、迎えに来た母の車で帰ったと聞いたのは、後の事だった。


プロポーズをしてくれた和典が、事故で亡くなるなんて、現実を受け止めたくなくて、葬儀に行かないと言っていたのに、無理やり強引に連れて行ったのは、母だった。


葬儀に行って、夢から覚めるように、現実を受け入れる事が出来たし、立ち直る事も出来た。だから今は、母に感謝している。あの日は口もきかなかったけれど……。


後は和典が気づいてくれるのを、待つばかりだった。どう伝えたらわかってくれるだろう、なんて説明したらいいんだろう、そうずっと考えながら目の前の和典を見ていた。


校門でまってろと聞いて「……うん。」
と頷いてから、鞄の中を探る。もしかしたら、まだ入っているかもしれない、そう思いながら。
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