短編小説

□『 Photo 』
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諦めきれなくて、ずっと待っていた。30分、1時間、1時間30分……。
それでも待っていたけど、和典は来なくて、帰ろうと思った時に携帯が鳴った。


その電話は母からで、話を聞いて頭の中が真っ白になった。
『……紗希、聞いてる?』
と聞かれ、かろうじて短く返事をする。その後、母が話していた内容は、まるで覚えていない。私は、電話を切るのも気づかないで、ただその場に立っていた。


和典が3年目の記念日に、一緒に祝うために会いに来たのは、前日の事だった。書店に寄ってから、いつもの帰り道を歩いていると和典が待っていた。
「……どこ行ってたんだよ。」
そう話しかけられ、振り向く。だけど、驚いて、すぐには声が出なかった。

「ど、どうしたの?」
なるべく、自然にそう話す。
「決まってるだろ。明日、校門で待ってろよ。」と聞いて、和典は1年が過ぎた今でも、自分が亡くなった事をわかってないんだ、そう思った。


小さい頃から霊感がかなり強くて、祖父や祖母が亡くなってから、よく家に来て私達家族を見ていたり、飼っていたマルチーズが亡くなった時も、同じような事があったから、和典が見えても不思議ではなかった。
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