短編小説

□『 Photo 』
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「お前、幸せそうに食うよな。」
笑いながらそう言うと
「だって、本当にここのケーキ、美味しいんだよ?」
と言いながら、ケーキを差したフォークを目の前に突き出す。人目も気にしないで食べてみると、このケーキも確かに旨かった。


食べ終わって、俺の家とは逆の方に帰る紗希を送りながら、暗くなりかけた道を歩く。


「明日……何の日か覚えてる?」
そう聞かれて、女は記念日や誕生日が好きだと母から聞かされ、忘れる父には愚痴を聞かされていたから、覚えていた。
「付き合って……2年目だろ?」
と返事をすると
「……だったら、いいんだ。」
そう言って、笑顔を見せた。


「明日、校門で待ってろよ。」
紗希の肩を抱きながら、そう言うと、一瞬曇った顔を見せてから
「うん。」
と、頷いた。


紗希は、どうして元気がないんだろう。今まで、何かの記念日には、いつも嬉しそうにしていたし、楽しみにしていたのに。
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