短編小説

□『 Photo 』
2ページ/7ページ

それまでは、バレンタインに女子からチョコをもらったり、告白された事もあったけど、付き合う事はなかった。それよりも、友達と遊んだ方が楽しかったし、興味がなかったからだ。周りからは「もったいねえ、俺なら付き合うぞ。」
「お前、理想高くね?」と散々言われたけど、気にする事もなく、友達に彼女ができていくなか、俺には中3になるまで、彼女はいなかった。

  *  *  *

「浅野 和典!」
そう背後から呼ばれ、振り向くと、紗希が笑いながら立っていた。
「何だよ、紗希かよ。」と答えると、トイレから戻って来た紗希は、迎えに座った。


お互い同じ公立の高校に入学して、紗希が帰りに服を買いたいからと、付き合った帰りの事だった。


バイトの給料が入ったからと、いつもはファーストフードに行くのに、この日、カフェに行こうと言ったのは俺。この前、映画を観た帰りに、雰囲気のいいカフェの前で
「ここのケーキセット、美味しそう。」
そう言っていたのを、覚えていたからだった。


「お待たせいたしました。」
そう言って店員が、注文したケーキと飲み物を置いていく。紗希は、店員が行ってから、嬉しそうに食べ始めた。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ