短編小説
□『 偶然 @ 』
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今からちょうど二年前、まだ暑さが残る夜に、自分の意識とは裏腹に、まるで体がばらばらに壊れるんじゃないかという思いをして、彼と別れた。
一年付き合って、私達はよく喧嘩もしたけど、仲がよかったし、お互い別れるなんて少しも考えた事がなかった。
だけど、そんな仲を壊したのは他ならぬ彼だった。
「実は俺…結婚していたんだ。あいつはずっと入院している。」
そう聞いて、頭にきたというより心臓が飛び跳ねて、体中が熱くなった。
奥さんが入院して、寂しくて、だからBARで声をかけたとしたら、私じゃなくて他の人でもよかった、そう思った。
彼は必死にそれは違うと、わかってくれと言ったけど、今さら何を信じればいいのか、わからなかった。まだ、こんなに好きなのに、彼の隣にずっといられると信じていたのに。