企画
□篁対神様?!
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──誰だ
そう言う篁は、射抜くように聖を睨みつけた。
「誰って、我しかおらぬであろう?冥官」
「貴船の祭神が何の用だ。さっさとその躯から出ていけ」
「そう邪険にするな。これが貴船に来ないから我が出向いただけのこと。返して欲しければ来るがいい」
そう言うなり、聖に憑依した貴船の祭神はその姿のまま、そこからいなくなった。
「っ………あの、自己中が……!」
ギリッと唇を噛むと、篁は身を翻し貴船へと向かう。捕られたものは取り返す。これがモットーだ。
一方貴船では、
「あの、なんで私がここに?そして、なんでこんな恰好なんですか!?」
起きた聖は、面白そうな笑みを浮かべた高於に叫んだ。篁と一緒にいた筈なのに。
「お前と久しく話してなかったからな。その巫女装束は嫌がらせだ。冥官へのな」
実に面白そうだ。聖は顔をひきつらせる。
「お前に憑依した時のあの冥官の顔は面白かった。あれにあんな顔をさせられるのはお前ぐらいだ」
「は、はぁ……(その後が怖いんだけど…)」
「平安の時からあれは可愛げがなくてな、なのにあれに懸想する女官は後を断たなかった」
「(やっぱり篁ってモテたんだ)」
「そのくせ浮ついた噂ひとつたたない。全くからかいがいのない奴だ」
何故か愚痴り出した高於に、聖は聞きつつも自分が側にいてもいいのかと思い始めていた。
「だが、お前と共に過ごすうちにあれは変わった」
「変わった……?」
「あぁ。少しはからかいがいのある奴になった」
「だからこんなことを……」
ため息を吐いた聖は、半ば呆れた。そして高於は、やっぱり面白そうだった。神というものは、暇なのだろうか。真剣に考えてしまった聖。
「しかし遅いな。あれから一刻は経った。あれが来ないとは考えられんし、何かあったか?」
「篁………」
ふわり
後ろから突然腕が伸びてきて、聖を抱きしめた。
「遅くなった」
「篁……!」
「来たか冥官」
「来たから返してもらうぞ。貴船の祭神よ」
「まあ、仕方ないか。しかし、いらないのまで持って来られてもな」
「いらないなんて心外な。私はただ単に聖が心配で来ただけだが」
「閻羅王太子がわざわざ。余程冥府は暇と見える」
「なんで燎琉兄上が…」
「来んでいいと言ったが、仕事ほったらかしてついて来た」
「帰ったら仕事の山だね」
高於と燎琉が舌戦を繰り広げる中、篁はぎゅーっと聖を抱きしめていた。のんびりしている。
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