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□月夜の晩に
ザクザクザク
月明かりが辺りを照らしているので、忍人は茂みに潜み千尋の様子を伺っていた。
ザクザクザク
一心不乱に何かを彫る千尋の後ろ姿を遠くから眺め忍人は深いため息をついた。
(本当に君は…)
いつもなら夜に一人で出歩くなどもってのほかだと即注意するところだが、今回は事情が事情なだけにそれもできない。
忍人は遠くから目を凝らす。
千尋がノミを必死につきたてている物体。
茶色にみえるが明るいとはいえ夜ではよくわからない。
やはりここは理由を問いただすべきだろう。隠れているのは性にあわない。
忍人が意を決して立ち上がろうとしたとき、千尋に近づく人影が一つ。
「姫サマ、どうだ。調子は」
「足往。うん、もう少しだよ」
なぜ、足往が。まさか…。足往を…。
忍人は疑念を振り払うように頭をふった。
【月夜の晩に】
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