宝物ブックコーナー

□隼人さまよりいただきました。頼忠が風邪薬だったらという奇想天外なお話です!
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『良薬は口に苦い者B:贈り物』 




 もしも頼忠が風邪薬だったら

 風邪薬とヒト

 遙か2:頼忠と神子さま





風邪を引いたかもしれない。

少女は念のために薬を服用しておこうと救急箱から風邪薬を取り出した。
瓶から取り出した錠剤を自身の手のひらに乗せると何故かそれは消えてしまった。
錠剤が消えるのと同時に目の前には無表情な男が現れた。

突然のことで少女は悲鳴に似た声を上げたが男は動じずに無表情なまま少女の目の前で肩膝をついて畏まっていた。


「お呼びでしょうか。」

「よ、呼んでません。呼んでません!呼ぶも何も貴方と私は初対面ですよ。そもそも何処から侵入したんですか!よ、よければ帰ってもらえませんか。今ならまだ警察に連絡とかしませんから!」

「どうか落ち着いて下さい。」

「落ち着いてなんていられませんよ!見知らぬ人間が昼間から堂々と不法侵入してるんですよ。もう誰なんですか、貴方は!」

「風邪薬です。」

「や、薬局の人……?」

「突然のことで混乱なさるのはご最もかと。よければこちらをご覧下さい。」


男は説明書を取り出した。

書かれている説明書を簡単に要約すると薬が人となって服用した者を薬の効き目が続く限り病原菌や危険からお守りするといったものだった。

システムは理解したのだが少女はまだ怯えていた。


「どちらかにお出かけですか。」

「はい。ちょっとお出かけしようかと思って。」

「貴方は我が主。何があろうともこの身に代えて貴方をお守りいたします。よければ私を供としてお連れ下さい。」

「あの。ありがとうございます。その、気持ちだけで十分って言いましょうか。貴方がいたら妙に目立ちそうな気がして。ご近所の目もあるから。それとそんな主なんて大袈裟な言い方しなくても普通に……。」

「では、参りましょう。」

「……どうか気づいて下さい。遠回しにご一緒するのを断っているのを!」


少女の地味な抵抗も虚しいままに男は既に玄関にて少女の靴を用意して自身は外で静かに待機をしていた。
少女が歩き出すと無言で後ろからついて来る男はもはや風邪薬というよりかは用心棒の風格だ。

道を歩いていると男の空気が変わった。
急に少女の前に飛び出したと思ったらついに気でも狂ったのか何もない空間を素早く刀で切りつけるような動作を見せた。


「な、何ですか!御乱心ですか!!」

「お見苦しい所をお見せして申し訳ありません。御前に病原菌が現れましたので切り捨てておきました。」

「……貴方には一体何が見えているんですか。」

「私は人に有害な細菌は視覚で確認することが出来ます。この道は除菌が完了いたしました。貴方を脅かすものは私が全て排除いたします。どうか安心して前にお進み下さい。」

「………。」


っていうか、貴方が怖い。

それは口が裂けても言えなかった。
男が自分を思ってしてくれているのは分かっているつもりだが急に刀を振り回されるとご近所の目はかなり冷ややかなものだ。

少女は男を連れて急いで家に引き返し、その日は男が消えるまで家から一歩も出なかったという。






 おわり。




 贈り物

 親愛なる摩耶さまに捧げます








2009 12/27 Sun.  



神子殿は思わぬ風邪と災害に出会ってしまったようですが、彼が来てくれるなら世間の冷たい目にも耐えてみたいと妄想させていただけた作品でした!初夢に風邪薬の彼がでてきてくれることを願わずにはいられません。
素敵な夢をありがとうございました。

 摩耶


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