夢浮橋劇場再演(二)

□みにくいアヒルの子
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【みにくいアヒルの子】

●みにくいアヒルの子ー鷹通
●他のアヒルの子ー将臣・永泉・翡翠
●アヒルの母ーイサト
●ナレーション−花梨

〜開幕〜


花梨『昔、あるところでアヒルのお母さんが卵をあたためていました。ある日、卵が次々と孵り可愛い雛が顔を出しました。』

イサト「へへ、これで俺も母親かぁ。なんか照れるな。」

将臣「あ〜やっとでれたぜ。」

永泉「外の空気はなんと新鮮なのでしょう。」

翡翠「狭い空間には慣れていないからね。まったく肩がこってしまったよ。」

花梨『ところが一つだけ他のものより大きな卵がまだ孵りません。』

翡翠「おやおや、まだ夢に浸っている雛がいたようだ。」

永泉「中の雛は大丈夫でしょうか?」

将臣「よし、いっちょ手伝ってやるか!たあっ!!」

ピシピシピシ!

花梨『他の雛の手助で最後の卵は無事孵ることができました。』

鷹通「ああ、すみません。カラが固くて中々割れませんでした。」

花梨『最後の雛が卵から孵り顔をのぞかせると先に生まれた雛達は驚いた顔で、こう言いました。』

将臣「うわ、なんだお前。」

翡翠「私達の愛らしさと随分かけ離れているようだ。」

永泉「ああ、なんということでしょう。正視にたえることができません。」

花梨『雛達は口々に最後に生まれた雛を醜いと馬鹿にしました。』

イサト「お前ら、やめろよ。兄弟だろ!」

将臣「兄弟でも不細工なもんははっきりいわなきゃな。」

永泉「そうですね…。真実を捩曲げることはできません。」

鷹通「…。」

花梨『醜い雛は俯き皆の言葉を黙って聞いていましたが、やがて顔を上げてこう言いました。』

鷹通「先程から黙って聞いておりましたが貴方達は私のことを醜いとおっしゃられているようですね。確かに美に対する感覚は人それぞれだと思います。ですが生まれたばかりの貴方達がまともな美的感覚をもっているとは到底思えません。いったい何を根拠に私を醜いとおっしゃられるのか、理路整然とした理由を是非お聞かせ願いたい!」

翡翠「…いや、今その理由を突き止めるのは得策ではないと思うがね。」

将臣「おい、落ち着けよ…。」

永泉「あ、あの…。」

花梨『雛達は勢いに圧され母親にすがるような視線をむけました。』

鷹通「イサト!母親としての君の意見を聞かせてもらおう。」

イサト「悪い…俺、母親になるの早過ぎたかもしんねぇ。じゃあな!」

将臣・翡翠・永泉「えっ!」

鷹通「あっ!」

花梨『こうして生まれたばかりの雛達は母親に捨てられてしまいました。』



おしまい

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