Long
□ここからはじまる
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気が付けば沢田綱吉をいつも見ていた。
彼を見ていると、心拍数は上がって胸が苦しくなり、彼が他の誰かと話していると言い様のない苛立ちと不安が身体中を支配する。
それなのに見ることをやめられない。どうしても目でおってしまう。
愛している。
この狂おしいほどの感情に気付いたのはいつだったか。
僕には僕だけしかなかったのに
誰かと一緒にいるなんて煩わしくて堪らなかったのに
なのに、
彼がそばにいて
僕だけに笑いかけて
そして
彼も僕のことを想ってくれたら
なんて
本当にどうかしている。
だがそれでも、僅かな姿でも視線にとらえようと彼をさがすことはやめられなかった。
昼休みの応接室。
仕事の合間、少し疲れを感じ目を閉じた。しばらくそのままでいたが、今日中に終わらせなくてはならないものがあと幾つかある。
未練がましくゆっくりと目を開ける。すると、可愛らしいあの子が目の前に立っていた。
なんでここにいるの?
訪ねようとしたけれど、彼のふんわりとした微笑みをみたらそんなことはどうでもよくなった。僕も彼に笑い返す。
彼は僕をきらきらとした瞳で見つめ、僕もまた彼を見つめ視線を絡める。
僕は椅子から立ち上がり、机を回って彼の正面に立った。もちろん、視線はそのままで。
彼の柔らかい髪をなで、下に滑らせ頬に手を添える。
僕は息を吸い、口を開いた。
「好きだよ。」
はっと意識が戻る。
遠くから部活の掛け声が聞こえ、応接室は夕焼け色に染まっていた。
「…ばかか、僕は」
思わず独語した。
告白する夢を見るなんて、どれだけ彼に想いを寄せているのか。
だが覚めた思考とは裏腹に心臓は大きく脈打ち、気分は昂っていた。
夢で触れた彼の髪と頬の感触を思い出す。
自分の妄想と分かっていても愛しさが止められなくて、そっと夢の中で彼に触れた方の手に口づけをした。