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□あなたの傍でいさせて後編
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夫の背中を洗いながら、リディアはまじまじと夫の背中を見つめた。
(私、この後…エドガーの…この身体に抱かれるのね…)
「リディア?」
背中を洗うリディアの手が止まったので、どうしたのかと振り返る。
「あ…、ごめんなさい」
我にかえると再びエドガーの背中を洗い始める。
「…そう、ならいいんだけど」
何故だか深入りしてこない夫にリディアはほっと胸を撫で下ろす。
そのまま洗い続け、ザッパーン!と洗い流す。勢い余ってエドガーの髪にまで渋きが飛ぶ。
「あ!エドガー、ごめんなさい」
ポタポタと流れ落ちる雫を見てリディアは謝罪の言葉を放つ。
しかし彼は無言のまま妻から差し出されたフェイスタオルを受け取り、髪を拭き出した。
「ねえ…エドガー?どうしたの…」
静かな態度がリディアの心を揺れ動かす。

(うそ、怒っちゃった?エドガー…)


微かな不安がリディアの胸を掠めた。
その直後、自身の背に温かいモノを感じゆっくりと振り返った。
「エドガー、どうしたの…」
視線の先には真っ直ぐリディアを見つめる夫の瞳がある。
わけが分からず、困惑し、夫の名を呼ぶ。
エドガーはリディアを浴室の壁に寄り掛からせると、金緑の瞳を見つめる。
「リディア、そんな表情するなんて…やっぱりズルいよ」
「え、ズルいって…どういう意味…」
「ズルいからお仕置きだよ。リディア」
意地悪く言いながらエドガーはリディアの唇にキスをした。
目を丸くして事の成り行きを見届けているリディアであったが、エドガーのキスが長くなるにつれて甘い声を漏らしだした。
「んん…っ、やっ…」
角度を変えてリディアの唇を奪うエドガーに拒否しようと奮闘するが、出るのは甘い吐息のみ。
そんな状態を回避しようと後ろ手で何かないか探る。手探りで探すとシャワーのレバーが手に触れる。
リディアはレバーを一気に回した。
途端、図上から大粒の雨が降りかかる。
咄嗟に唇を離し避けたエドガーだが、レバーを回した本人、リディアはずぶ濡れになってしまう。
「も…うやだぁ…」
話すと同時にリディアの身体に巻かれていたバスタオルがハラリと床に落ちる。バスタオルを拾おうと屈むリディアをエドガーは立ち上がらせ抱きしめる。
「ちょ、バスタオルが落ち…」
「今離れると君の身体が僕に丸見えだよ」
「そんな!!」

密着しながら妻の耳元で話すエドガーにリディアは心臓がバグバクだった。
その証拠に耳まで真っ赤になっている。
彼女の反応を楽しみながら夫はゆっくりと壁に掛けてあった予備のバスタオルをリディアの身体に巻き、離した。
離された後もリディアは恥ずかしくて顔を上げられなかった。
エドガーはそんなリディアをヒョイと抱き上げると浴室を出た。
やっと顔を上げられたリディアは夫に尋ねる。
「ねえ?浴槽には入らないの…身体が冷えちゃうよ」
「リディア。今から心も身体も温まるコトするから大丈夫だよ」
にっこりしながら話すエドガーにおさまっていたドキドキの波が再び押し寄せてくる。
口をパクパクさせて何か言い返そうとするが、声にならない。
抱き上げられ、リディアを寝室のベットに横たわらせる。
これから行われる情事にリディアは全身の力が抜けていくのを感じた。





続く…。
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