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□今夜は私におまかせ
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「ようこそお越し下さいました!!」
盛大なお出迎えでエドガーとリディアを迎えたのは以前二人の結婚にヤキモチを妬いてリディアに嫌がらせをしたベティであった。今は蟠りも解け、今日は彼女の誕生日会が開かれるので招かれたのである。
「ベティ、お誕生日おめでとう」
リディアは小さくお辞儀をし、ベティと抱き合う。
「いいえ、こちらこそお忙しい中来て下さって嬉しいですわ」
話しをしながら一緒に屋敷内に入ると向こうから一目散にかけてくる白と黄色のドレスの令嬢たち。
リディアは隣にいるエドガーにこっそり耳打ちする。
「エドガー、きっとあなた目当てのお嬢様方よ。」
「おそらく…」
肩をすくめ合図すると、やって来た女性たちに会いに行く。その後ろ姿を少し寂しげに見送りながらリディアはベティと共に歩く。
「リディアさん、気を落とさないで。私はエドガー様にはあなたが一番お似合いだと思っていますから」
そっとリディアの手を握る。
「ベティ、ありがとう」
彼女の励ましにリディアはさっきの寂しい気持ちを振り払い、笑顔になる。
今日はベティの誕生日パーティーだ。暗い気持ちはやめて楽しもう。
そう思い、賑やかな会場へと繰り出す。


ベティらと楽しくお喋りや美味しい料理を食べて小一時間。
リディアがふいに辺りを見渡しだした。
「どうしましたの?リディアさん?」
ベティがキョロキョロとするリディアに声をかける。
「え…、あ、エドガー遅いなぁて…」
振り向き様に答えたリディアだったが、ふと目の端にエドガーの姿を捉える。彼はまだ、令嬢たちと楽しくお喋りをしている。


私もあんな風に積極的にエドガーと…。


そんな思いを抱きながら、テーブルに置かれているジュースを飲む。途端、視界がゆらゆらと揺れだす。
「あれ?どうなっちゃったんだろ…」
「リディアさん!それはお酒よ!!」
ベティが慌てて取り上げるが既に遅く、彼女の頬にはほんのり赤みが差している。
「リディア、ごめん。やっと彼女たちから解放されたよ」
令嬢たちの波から帰ってきたエドガーはどこかしら疲れているようだった。
「エドガー様、実はリディアさん…」
ベティはリディアがお酒を飲んだことを伝える。
「リディアがお酒を?何故飲んでしまったんだい?」
「それは…きっと…」
ベティが話そうとするとリディアが制した。
「ベティ…私は大丈夫よ」
本人は大丈夫というが明らかにお酒がまわっている状態だ。その証拠にますます頬が真っ赤になってきている。何故お酒を飲んだかを問う前に、酔いを冷まさなければと思い、エドガーはリディアをヒョイとお姫様抱っこした。
「ベティ、どこか休める場所はあるかい?」
「え…ええ。二階に休憩室がありますわ」
「ありがとう、ちょっとリディアを休ませてくるよ」
にっこり微笑みながら去るエドガーに、ベティはおろか、先程お喋りしていた令嬢たちも感嘆の声を漏らすのだった。


二階へ上がり、ベティに教えてもらった部屋に入ると、彼女を室内のベットに横たわらせる。頬に手を触れると熱く、真っ赤になっている。
「リディア、ここで酔いを冷まそう」
そう告げると部屋を出で行こうとした。
「行かないで…エドガー」
ふいにリディアが呟く。どうしたのかと思い振り向こうとすると、いきなり彼女が背後から抱きついてきた。
「リディア、一体どうしたんだい?」
いつもとは違う妻の行動。エドガーは、まだお酒が抜けていないのだろうと、リディアの手を取り正面を向かせる。
「私は酔ってなんかいないわ…」
そう言うといきなりエドガーの唇にキスをしてきた。いつも恥ずかしがって、決して自分からはしないリディアが自らしてきたのだ。リディアの突発な行動にエドガーは目を丸くしてキスを受け入れる。一瞬唇を離すが、またすぐにキスをしてくる。
濃厚なキスの嵐が過ぎると、リディアはエドガーの上着に手をかけ始めた。
「リディア、キスは嬉しいけど、この続きはやっぱり自宅の方がいいんじゃないかな?」
言いながらリディアの手を離そうとした。だが、彼女は首を振り、拒否する。
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