本棚T

□夫婦の時間
1ページ/2ページ


「ん…よく寝たわ…」
いつも通りの朝。リディアは大きく伸びをして上体を起こす。すると突然身体を引き寄せられる。
「っ…きゃあ!」
「おはよう、僕の愛しい妻リディア」
リディアを引き寄せ、朝からこんな甘い言葉を囁くのはもちろん夫のエドガーである。
「エドガー、朝からびっくりするじゃない」
驚き混じりに視線を移すとエドガーは不意打ちとばかりにリディアの額にキスをする。
「だってリディアの寝起き姿があんまりにも可愛いから、つい…ね」
片目を瞑り、イタズラに微笑む。
「もう、エドガーたら」
怒り気混じりに話すリディアだったが本心は怒っていない。むしろ夫の毎朝の行動にドキドキが止まらないぐらいだ。結婚してから数ヶ月経つが、未だ恥ずかしくて今日みたいな言動を吐いてしまう。
そんなリディアの姿にエドガーはますます愛しさを感じ、リディアを抱きしめる手に力を込める。
「リディア、そんなに可愛く怒ったら僕、耐えられないよ」
「へ?耐えられないって…まさか!」
リディアは身の危険を感じ、急いでエドガーの腕から逃げようとする。だが、もちろんエドガーは逃してはくれない。
エドガーはリディアの身体をゆっくりと押し倒した。もちろん未だベット上にリディアとエドガーはいるのでリディアの背にはふかふかの寝具が当たる。
「ちょ…エドガー待って、いくらなんでもこんな朝早くから…」
リディアが恥ずかしそうに頬を染め、視線をエドガーから外しながら話す。
するとエドガーはリディアを見下ろしながらくすくす笑いだした。
「な、なんで笑うのよ」
エドガーの笑いにリディアはキョトンとした表情で問う。
そんなリディアにエドガーは笑いを止めてリディアの美しいキャラメル色の髪をひとふさ掴みキスをした。
「もしかして、昨日の夜の続きを…想像した?」
先程とは違い、不適な笑みを浮かべる夫。
リディアは返す言葉が見つからず、赤面したままとりあえず視線をエドガーからずらした。
リディアの反応があまりにも面白い(可愛い)ので、エドガーはついリディアを困らしてしてしまう。
でもそれはリディアのことを本当に愛しているからこその行動。
「リディア、視線を反らさないで。僕を見て」
「っ…」
リディアはゆっくりとエドガーに視線を戻した。自分を見つめる灰紫の瞳は変わらずリディアを見つめている。
「エドガー…私ね…」
「すみません、朝食の用意が出来たのですが…」
は!と二人は驚き、声のした方を振り返る。
そこには気まずそうにレイヴンが立っていた。
恐らく何度呼んでも返事が無かったので部屋に入って来たのだろう。
入った途端、エドガーの甘く囁く台詞にレイヴンは二人の間に入るタイミングを無くしてしまい、言い出せなかったのだろう。
リディアが、いつからいたの?の質問に、エドガー様がリディアさんに囁き出したところからですと大真面目に答えてくれた。
エドガーとリディアの体制を見たレイヴンは、
「夫婦の時間に割り込んでしまい申し訳ございません。それでは…」
何事も無かったかのように去って行く。
「レ、レイヴン…。待って!夫婦の時間って…ちょっと!」
レイヴンを追いかけようとリディアはエドガーから離れようとしたが、やっぱりエドガーに押し倒される。
「レイヴン、ありがとう。夫婦の時間を大切にするよ」
エドガーの嬉しそうな表情にリディアは焦る。
「な、なに言ってんのよ。今から朝食食べに…」
「朝食はリディアを頂いた後だよ」
「そんなこ…んふ…ん」
エドガーの濃厚なキスの嵐がリディアの唇、身体を麻痺させていく。
エドガーはリディアに聞こえない小さな声で呟いた。
(僕の愛しい妻リディア)
結局リディアはその日の朝食は食べられなかったとさ。










おしまい。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ