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□☆初夜でドキドキ☆前編
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華やかな結婚式が終わり、リディアはため息をつき、部屋で休んでいた。
「はぁ、ついにきてしまったのね」
彼女のいう きてしまった というのは結婚式のことではなく、その後のことである。
「やっぱり今日の夜…するの…よね…」
結婚した夫婦には必ずやってくる夜…すなわち、初夜である。初夜に関してリディアも全く知識がないわけではない。ただ、初めてなので、どう切り出せばいいか分からない。悩めば悩む程、混乱してしまう。どうしようかと室内を彷徨い歩いていると、ガチャリとドアが開いた。
「リディア、そんなに慌ててどうしたの?」
戸口には今まさに夫となったエドガーがこちらを見ている。
「え、あ…いや、なんでもないわ」
まずいわ…エドガーに悟られると…
《リディア!!大丈夫。僕に任せておけば全てうまく行くよ!》
なんて言って直ぐ様夫婦の寝室へ連れてかれてしまう。それだけは避けなくては…。
リディアは決心すると、さっきまでの気持ちを振り払い、何事もなかったように夫に話しだす。
「ほんとになんでもないの。私、自分の部屋に戻るわ」
向きを返え、エドガーの横を通り過ぎようとした。
「待ってリディア」
エドガーがリディアの手首を掴み、引き止める。止められた瞬間、ヒヤッとした。
(もしかして、さっきの話し、聞かれてたの!)
冷や汗をかきながら夫からの返事を待つ。しかし彼から放たれた言葉は全く違うことだった。
「リディア、今日の花嫁姿、ほんとに素敵だった…。今も僕の目に焼きついて離れない」
「エドガー…」
自分が思っていたことと違って安心したが、夫からの嬉し過ぎる愛情表現に感嘆の声を漏らす。彼の手がリディアの頬に優しく添えられた。顔を上げれば、切なげに自分を見つめる夫の姿が目に入る。


こんなにも私を愛してくれる優しい夫…。

リディアの中から先程までの不安が一気に無くなった。
(大丈夫、もう怖くない。私は、エドガーの奥さんなんだから)
リディアは頬に添えられている彼の手に自らの手を重ねる。安心できる…彼の腕の中なら。覚悟を決めたリディアは今さっき思っていた悩み事を打ち明けた。
「エドガー、私ね…不安だったの。結婚して一緒になれたのに…その…始めての夜が怖いって思って。でも、もう不安はないわ!」
そう言い切る彼女は、いつにも増して大人びていた。妻の発言に少々驚き気味のエドガーであったが、彼女の自分に対する溢れんばかりの思いを悟る。
「リディア、ほんとに大丈夫なんだね。始めてでも、激しいかもよ」
「え、激しい…って?」
キョトンとした表情で再び彼を見上げると、ニヤリと笑う夫の姿。
なんだが、さっきまでの勇気が退いてしまいそうな錯覚に陥る。
「あの、激しいって?」
「その答えは向こうで教えてあげる」
彼の視線を辿るとそこには真新しい寝具が置かれた夫婦のベットがあった。やっぱりだめと言いかけたが、それより先に彼の唇が触れる。
優しい口づけを受け、リディアはゆっくりと目を閉じた。
これから始まる長い長い夜に身を任せて。












後編に続く。
 

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