novel

□"lovely" and "sulky"
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「お疲れさまでしたー」



仕事が終わるとすぐ、楽屋を出た。
そして、そのまままっすぐアタシの家へ帰宅。

だってあの子が、家に来るって言ったから。

仕事の休憩中に突然鳴った電話に出たら、


「今日お宅訪問するからー♪」


なんて、呑気な声に意味不明な言葉。
その上、文句を言う暇もなく電話は切られちゃったし。


「相変わらず自由なヤツ;」

だけど………好きだから。
自然と頬が緩んじゃうアタシがいる。




「ただいまー…」


…あれ?
“おかえりー”って返ってくるはずなのに。
まだ来てないのかな?
ぃゃ、でも靴…あるし。



「…ごっちん……?」



不思議に思いながらリビングに入れば、
見慣れた後ろ姿。
最近また変えたらしい髪型。

…で、なんで振り向かないワケ;?
アタシの声に反応もせずに、テレビ画面を見つめてる。


見ればそれは、アタシが出てるドラマで。
リアルタイムじゃなかなか見れないから、
録画して貯めておいたやつ。


見てくれてるのは嬉しいけど。
でも、気にくわない。



「ごっちんってばっ…アタシ帰ってきたよ?」
「ん、んぁ…?ぁ…まっつー、おかえりー」
「気付かなかったの?」
「んぁ…ごめん」
「…別にいいけど」



いいけどさ…
やっぱりちょっとショックかも。
久しぶりに、会えたのに。


そんなアタシの気持ちを察したのか、
立ち上がってとことこ近づいてきた。



「まっつー、ごめんね?」
「…ごっちんのバカ」
「ぅぁ…;」
「アタシ、急いで帰ってきたんだよ?」
「ぅん…」
「なのになんでテレビに夢中なのよ」
「まっつーのドラマ、見れてなかったから…」
「だからって…」



だからってさぁ…!
バカ。
バカバカバーカ。




「まっつー…」
「何よ?」
「まっつー…本間さん好きなの?」


…は?
“本間さん”…;?



「……もしかして、ドラマの“本間さん”のこと?」
「そー」
「ぃゃぃゃぃゃ、ドラマの中の話じゃん;」


なんで涙目なってんのさ;
しかも唇尖ってるし。
なんかアタシが悪いみたいじゃんか。



「まっつー、女の子の顔してた」
「演技だから;」
「でもでもっ」
「でもじゃないっ!」


アタシが大きい声出したら、
ビクッて震えて、動きが止まった。



「あれは演技なの!」
「まっつー…」
「ごっちんしか…好きじゃないから…」


恥ずかしいこと…言わせんな///
アタシが女の子の顔になっちゃうのは、
ごっちんの前でだけだから。




―――――――――――――――







その後、なんとかごっちんの機嫌は直って。
やっと2人でまったりタイム。
ほんとに久しぶりで…
いつもなら落ち着くはずの空間なのに、
意味もなくドキドキしてる自分に驚いた。



それもこれも、


「どうしてもまっつーに会いたくなったのー」


っていう、コイツのせい。



付き合いが長くなればなるほど、
お互いへの関心も薄れていって、
世間で言う、“倦怠期”ってやつになるらしいけど、


アタシたちには…それがないみたい。


だってアタシは、
どんなに忙しくても、
ごっちんの事務所の社長さんのブログとか…
チェックしちゃってるし、
ごっちんが出した曲は、
iPodに入れて毎日聴いてるから…///


ごっちんも、今日みたいに
アタシが出てるテレビを見ようとしてくれてる。



いつかこれが…
なんて不安、感じさせないくらい
ごっちんは優しく微笑んでくれるから。








「ってか、ドラマの役にヤキモチやかないでよ」
「だってだってー」
「“だって”って…;」
「まっつー愛情表現に乏しーだもん」
「っはぁ!?ひどくない!?しかもなんか日本語変だし」
「いーからいーからぁ♪」
「よくないから;」
「もっかい好きって言ってよー」



今日のごっちんは、
いつもより幼くて。
かわいーけど、なんでかこっちが恥ずかしい。


だから…




「絶対言ってやんないっ」
「んぁー…」




かわいくて、よく拗ねる、愛しい人。
…好き、だよ?




END

 

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