長編2

□秘密なカルマ
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『私の事どう思ってる?』



屋敷内を捜しまくって、やっと見つけた存在の名前を呼ぶ事もせずに唐突に言葉をぶつける。


捜している間に何度となく何から話そうとか、
短い時間なりにも沢山考えた。



それでもそれをぶつけるはずだった張本人を見つけたら、何パターンも考えたシナリオも 台詞も全てどこかに消えてしまって、


真っ白な頭から出てきたのがあれだ。




でもきっと、真っ白な頭の中から出てきたという事は、一番聞きたかった事なんだと思う。



掌をギュッと握ったら、そこは微かに汗ばんでいて、あぁ、私、緊張しているんだ、と実感した。




「‥すみません、用事がありますので」



そう言って逃げようとする冬獅郎の腕を掴んで引き止める。



『逃げないでよ。今度は昔みたいに逃げないでちゃんと答えて…
私自身を答えに出して…ッ』



身分とかそんなものに左右されない。
本当の気持ちが私は知りたかった。

1年間の間、私が求めてたのはそれだけ。




『私は、ずっと…冬獅郎が好きよ!昔も今も!ずっと、ずっと!』



言えば言うほど感情は募って。


本当は怖いのに、
足も手も震えてしまっているのに、
それでも絶対反らすものかと冬獅郎を見据える。





見据えて気付いた。
冬獅郎があの頃より成長をしていた事。




背が伸びていた。
髪が伸びていた。
身体がガッチリしていた。

そこにいたのは、確かに昔の冬獅郎で、
でも、知らない冬獅郎で。






それでも求める。


心が、この人を。






「ふざけんな…俺は‥俺の方が! お前の事ッ ずっと…好き、だったんだよ‥」


想いが言わなくても伝わるなんてやっぱりそんなのは嘘だ。


だってあんなに近くにいたのに知らなかった想いがここにある。



言葉にしなきゃ、きっと気付かなかった想いが。





傷付いたのは私ばかりだと思っていたのに、
本当に傷付いていたのはどっちだったのか、
もしかしたら 私じゃなかったかもしれない。





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