明日への、今

□act.1
1ページ/1ページ













泣かないと誓った。

前だけを見るんだ、と。

弱いままじゃ、駄目‥だと知った。


私が立ち止まっても、世界は動き続ける‥



だから私は、
誰かを守れる強い人間になろうと思った――‥









『い‥やぁぁあああ!!!!!!!』


幼い頃から見えた人じゃない何か。


人の形をした偽者。


私の世界はそれが当たり前だった。


生きている人間と


生きていない者がひしめき合う世界で私は生きていた。


それに知らない顔が出来たのは、それらが見えない私の家族がいて、それらが危害を与えてこなかったから。



でもどうしてか、大きくなるにつれて、あの偽者は形を変え始めた。


人間の形をしなくなった。

まるで化け物のような姿形をして…人を喰い、

私に襲いかかるようになった。


どうしてかなんてわからない。

ただ、感じる恐怖と、見える恐怖とが私を支配する毎日が続いた。




そして、そいつらは…



私の大事なものを、
いとも容易く奪い去る。



何よりも大事で、大切だった家族を…


たった一瞬で、


私の目の前で、



血まみれになる父を母を、妹を、私はそいつにまざまざと見せつけられた。


『やめ、て…』


そいつはとち狂ったように叫び、血を蔓延らせ、私を見る。

泣き喚く私を笑い、次はお前の番だと叫ぶ。


怖かった、
怖かった、でも、そこで気付いてしまった。


父が、母が、妹が息絶えた感覚に。




どうしてこんな事になったんだろう。

なんで私はこんな化け物が見えるのだろう。

どうして、私なの?!


こいつらは、私を狙っていた、だから家族が犠牲になった。

もう、怖いとか、そんな恐怖感はなかった。


『殺してよ、私が狙いなら、早く殺しなさいよ!!』


私が叫んだと同時に、あの化け物が悲鳴をあげる。

血しぶきが上がる。




私の目の前には、刀を持った、黒髪の女の人が立っていた。










(運命の歯車は動き出して)




200916
.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ