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□欲しいのは、アナタ。
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生きていることで、哀しみしか生まれないのは何故だろう―――

ロックオンも、クリスも、リヒティも、モレノさんも……いつまでもこのままじゃ弱い人間だって笑われちゃうね。

でもいつか、自分も其処に行くから。だから、それまでは、アナタたちを想わせて。






「フェルト、」
トレミーの廊下で呼ばれて振り返る。

「ラッセさん…?」

今は操舵士 兼 砲撃手のラッセ・アイオンさん。ソレスタルビーイングには必要な存在。操舵士のリヒティが居ないから…


「…時間、良いか?」
「? はい…」

近くの空き部屋へ入って、「何か?」と催促する。

「あー…、何ていうか…、」

ラッセさんは言葉を選ぶように視線を泳がせた後、わたしの目を見て真剣に言った。




「…誕生日、おめでとう」

「え、」
――――そういえば。


「わたし、誕生日でしたっけ?」

真顔で聞いてしまった;
恥ずかしい…///

自分の誕生日なのに。


「…ぷっ、あははっ、お前、…くくく」
「…ラ、ラッセさんッ!///」

笑い出したラッセさんの腕を掴んで笑いを止めようとするけど、ラッセさんは止めてくれない。

…あんなこと口に出さなければ良かったのに!わたしのバカ!///


「っくく…」
「もぅ、笑わないでくださいっ!///」
「…はいはい。わかった。…俺も言うか迷ったんだけどよ」

頭に手を乗せられて、上目遣いに彼を見上げる。骨張った大きな掌だ。

「…もう、19になるんだな」

ラッセさんは悲しそうに目を細めた。

「何か欲しいものあるか?」
「…え、そんな、」
「いいよ、遠慮しなくても」
「でも…」
「いいから」

欲しいもの、なんてここ数年考えたことなかった。
ただ生き残ることと、どうすればみんなを守れるかを考えてきたから。

「そんな、すぐに何か思いつくものなんて…」
「だよなぁ…」


ラッセさんはわたしの頭から手を退けて、腕を組む。

「…じゃあ、後で何か欲しくなったら言えよ」
「え、あ…はい」

微笑んでドアへ向かうラッセさんの服の裾を引っ張って、止めた。

「…ん?」
「あ、あの、ありがとうございましたっ」
「いーよ、まだ何もしてないし」

まだ引き留めていたい、と一瞬思ってしまった。そのまま歩いて行ってしまうラッセさんをもう一度止めることはできずに、ドアの静かに閉まる音を聞いて立ち尽くす。




生きていることで、哀しみしか生まれないのは何故だろう―――
今は彼のおかげで哀しみよりも歓びの方が勝っているが。

ロックオンも、クリスも、リヒティも、モレノさんも……いつまでもこのままじゃ弱い人間だって笑われちゃうね。


でもいつか、自分も其処に行くから。だから、それまでは、アナタたちを想わせて。


だから今、欲しいものは無いけれども。


求めているのは、心。






欲しいのは、アナタ。
2008.12.28.
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