V

□そこは天国でも地獄でもなく
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医療カプセルの中で目が覚めた。先に挨拶したのは、彼からだった。
俺の好きな、あの声のまま。

「…にぃ、る?」
「そうだよ、刹那」

あのときと変わらない笑顔のまま。


「嘘、じゃないよね?」
「ああ。本当だ」
「…ニール…!」


4年前には出来なかった、抱きつくこと。今なら素直に出来る。




「愛してるよ」
「…うんっ」

彼の肩に頭を乗せられるくらい身長が伸びていて、すぐそこに彼の顔があるのに驚いた。



「俺も、あいしてる…」
「ありがとう。刹那」


そう言ったロックオンを見上げると、急に眠気が襲ってきた。

「刹那、眠い?寝てもいいよ」
「…ダメ、だよ…。…にぃる、が、」
「俺はずっと、ここに居る」
「…っ」


その言葉に安心したのか、俺の意識はそこで途絶えた。








夢を見た。
ロックオンが居なくなる夢。

ということは、やはりさっき居たロックオンも幻覚だろう、と目を開ける。


「刹那、おはよう」


夢じゃ、なかった。
ホントに、居た。



「っニール!」
「うわ、」

思いきり抱きつくと、ロックオンはよろけながらも支えてくれた。



「刹那は甘えたになったなぁ」
「ニールがそうさせてるんだっ///」




幸せだった。
彼が生きているのが嬉しくて……もうここは天国なんじゃないかと思うくらいに。


俺はあのときリボンズと戦って、そして死んだんだ。そう、思った。







でも、俺の耳には聞こえていた。




医療カプセルの機械音と、俺を呼ぶロックオンの、心臓の音が。


2009.4.12.

死んでても生きてても、どちらともとれる話ですねぇ(・o・)ノ

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