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□6/12 リヒティ誕生日
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目が覚めたら………、


―――――マイスターが部屋に居ました。





「………………ぇ?」




「気にするな」

ガンダムエクシアのパイロット、刹那・F・セイエイが一番に口を開いた。


「いや、めいいっぱい気にしてくれ」

同じくデュナメスのパイロット、ロックオン・ストラトスが俺の肩を叩く。……結構痛い。


「…4人とも、さっきまでミッションだったんじゃ…?」

確か、6時間前にミッションがあったはずだ。しかも、徹夜で。戦況が知りたくて夜中まで起きていたはず。それは覚えている。でも、この4人は地球待機だったような…。


「スメラギさんから連絡が来て、ね」

同じくキュリオスのパイロット、アレルヤ・ハプティズムが微笑みながら、事情を説明しようとする。

「…ミッション内容は機密事項だ」

同じくヴァーチェのパイロット、ティエリア・アーデがいつもの調子でアレルヤを睨みつける。
ごめん、とアレルヤが呟いて俺から目をそらした。

「………どうやって入ったの」

聞いて欲しそうな目で見るから、聞いてみた。
(みんなも知りたいでしょう?)

「…ハロでハックしたv」
ロックオン、それ犯罪。

「…本当は、グリニッジ標準時11時50分に着く予定だったんだけどさ」

ロックオンが髪をかきまわしながらすねたように言った。

「俺たち自分らで計算したから、時間、間違って…早めに着いたんだよね」


俺は机に付けてある標準時刻表(デジタル)を見上げる。時刻が11:42で点滅していた。


「…で、なんで俺の部屋なんすか?」


…ティエリア曰く、「機密事項」らしい。


刹那の瞼が、閉じかかっている。

それに気付いたロックオンが刹那の頭に手を置いた。
…ものすごく嫌そうだ。



「……眠いか?刹那」

「さすがに徹夜は無理だったかな…?」
アレルヤも心配だというように刹那の顔を覗き込む。


「…いや、…大、丈夫……」

「睡眠時間の管理もできないのか。君はガンダムマイスターにふさわしくない」
ティエリアさーん、読者が読みにくいと思ってますよーー!

なんて思ってたら、ジロリと睨まれた。

「…」

刹那はロックオンの肩にもたれて眠そうにしてるし。
ポーカーフェイスを気取ってても、まだやっぱり子供なんだな、って感じる。







最近は、4人の仲が良くなってきたから嬉しい。

少し前のみんなは、一人ひとりが過去を悔やんでて。とても冗談を言える状況じゃなかったし。

それに、ガンダムマイスターには近寄りがたい雰囲気がある。

実際、親しくなるのに時間がかかった。


今、マイスターたちと一緒に居られることの方が異常だと思うけど。


客観的に戦争が嫌で、ソレスタルビーイングに入った奴も居るけど、そいつらにはきっとわからない。親しくするのがどんなに辛いか…。死んだ友人を見て、あとで後悔するのが嫌と思うのも。……俺は、近くで見ててわかる。

他のエージェントには見せないマイスターの本当の顔、みたいなものがあるから。


ポーカーフェイスを気取ってても、幼い顔や行動、言動をしたり、もう15になるというのに身長が低いままの刹那とか。

いつもヒョウヒョウとして女たらしのロックオンが、昔は感情的で喜怒哀楽が激しかった、とか。そして一番の常識人だったり。

優しさの塊みたいなアレルヤが、目付き悪いクセに心配症、とか。

ヴェーダが一番のティエリアだって、スメラギさんやロックオンの意見を尊重する時だってある、とか。

みんな個性があって、一人ひとりに過去があって、だからこうやって廻り逢えたのかな、なんて。

俺たちソレスタルビーイングのエージェントにとっては、ガンダムマイスターは神みたいな存在だから、本当は自分と話してもいい人じゃないはずだ。

だから今、こうして居られることがとても幸せだと思う。

俺にとっても、彼らにとっても、……そうであって欲しい。


否、そうでありたい。





「……リヒティ、そろそろだ」

思いに耽っていたら、突然声を掛けられて驚いた。


「…8、…7、…6、」


アレルヤとロックオンが秒読みを始める。

何が起きるのだろう?



「…5、…4、…3、…2、…1ッ」



――――――バンッ!!



秒読みが終了すると同時に、扉が開いた。






「「「HAPPY BIRTHDAY!リヒティ!!」」」





クラッカーが引かれ、中身が微重力のため飛び散る。

びっくりした。――――そうだった。6月12日は俺の誕生日だ…。


祝いの言葉を言われたと知るのに、時間はあまりかからなかった。


「――え…っ」


入ってきたのは、主要メンバー。


「…みんな…っ」


「おめでと、リヒティ。もう21だね」

戦況オペレーターの、クリスティナ・シエラ。ひとつ歳上で、俺の好きな人///。


「…おめでとう」

同じく、戦況オペレーターのフェルト・グレイス。まだ13歳なのに偉いな、って思う。


「リヒティ、おめでとっ!祝杯をあげましょ!」

「…結局、酒っすか。」

スメラギ・李・ノリエガ。戦況予報士。無類の酒好きで、俺もよく付き合わされる。(勘弁して欲しい…)


「よぉ!お前が寝た後の食堂の飾り付け、大変だったんだぜ?」

ラッセ・アイオン。砲撃手。操舵士の俺に一番近い、…と思う。


「飾り付けのためにマイスターがお前を見張ってたんだよ。…それじゃ、移動しようか?」

イアン・ヴァスティ。ガンダムの整備士。俺とは仕事で直接の関わりは無いけれど、なんとなく気の会う相手だ。


「みんな、ありがと…っ」

不覚にも、泣きそうになる。

「おいおい…。泣くのは食堂の飾り付けを見てから、だ」


「っ…すみませんっ」


でも、こんなに嬉しい誕生日は久しぶりだ。

嬉しいと感じた時、ソレスタルビーイングに入って良かったと思う。

世界は、最悪なモノでは無いと思えるから。



「…ほら、リヒティっ!」

クリスに急かされて、やっと歩き出す。


マイスターが俺の肩を叩いていく。

なんとなく、励ましてくれたんだと悟った。

「…ありがと、ございますっ…本当に…」







食堂では、クリスとフェルトが作ったらしいホールケーキがあった。マイスターも食べられるように甘さ控え目のいちごのショートケーキ。その上には、ちゃんとチョコでデコレーションされていた。


「レッツ、プレゼントターイムっ!」

クリスの声で、みんながガサゴソと包みを出した。


「…俺たちからは、これっ!」

ロックオンが代表して、大きい箱が渡される。


「中身は…?」



「…人生ゲームだ」

「前に欲しいと言っていただろう」

刹那とティエリアが教えてくれた。
2人からプレゼントをもらうなんて、思ってなかったよ。俺、感激っ。


「結構、値段したよー。ロックオンのせいで品定めする時間もなかったし」

アレルヤの嫌味のような天然さに、笑ってしまう。

「それは謝ったじゃんか…。しかもプレゼントは速攻で決まってたしっ」

ロックオンがアレルヤに対抗する。

「ハイハイ。喧嘩しないっ!」

クリスがマイスターを退けて、俺の前に立った。

「あたしからは、これ!…誕生石のストラップ!端末にでも付けててっ」

「…ありがと。大事にするよ」

「アレキサンドライトって言うの!綺麗でしょ?…光の加減で色が変わるの」


クリスがくれたのを無くす訳がないよっ///。

「わたしは、これ。…クリスと地上に行った時に…」
フェルトからはマフラーだった。色は、緑。なかなかのセンスだよ、フェルト。
「ありがと。今度、使うよ」

そう言って、フェルトの頭を撫でた。
側でクリスがむくれていたのを、俺は知らない。


「俺はおやっさんと一緒に考えたんだが…」

ラッセとおやっさんが、持ってきたのは。

「最新型端末、だ」

通常は電話とカメラ、メールなどの機能がついているが、この最新型端末は文章の暗号化、そして盗聴避けがついていて何より使いやすい。

「いーなぁー」

隣に居るクリスが感嘆の声を上げた。

「…そう言うと思って、クリスにも特別にプレゼント」

「え…っ?ホント?」

「ああ」

「やったぁっ!…ラッキー!」

喜んだクリスから、ラッセに視線を移す。

「…これで、誰にも聞かれずに連絡できる、な」

と、小声で言われた。

……………嬉しいけど///。


「あたしからは、ねぇ……このパーティ、かな」

スメラギさんは¨酒¨って言いそうだったのに。

「…あたしが企画したのよー!予報士として、当たり前ね」

……………何が、でしょう?



それは、置いといて。




「あー!!何してんすかー!」

ロックオンと刹那がすでにケーキに手を付けているのを見つけた。

「………バレちった…?」
「もろ、バレてますし!!」



そして、みんなで笑い合う。



いつまでも、こうして居たいと思った。

過去から逃げていても、駄目なんだ。


だから俺は、みんなを守る。この幸せが、無くなることは許せないから。



来年も、こうやって誕生日を迎えられると良いな………








END

<(_ _;)>



2008.6.12.

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