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□Clover
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ソレスタルビーイングが武力介入して、2ヶ月が経った。
相変わらず、小さな紛争は続いている。
そんな時、刹那とロックオンに地上待機命令が下された。
「な、刹那。明日、お前ん家行っていい?」
「…」
返事が無くても、強引に決めてしまえば刹那は断ることをしない。
「明日、11時に行くからなー」
インターホンを鳴らしても、目当ての人物は出て来ない。
めげずに押し続けていたら、後ろから声を掛けられた。
「どうかしましたか…?」
この声は。――お隣さんか。
「いや、刹那と約束してたんだけど…。居ねぇの?」
「朝、僕が出かける時に一緒に出ましたよ?この通り、雨が降ってきたんで帰ってきたんですけど。刹那さん、まだ帰って来ないんですかぁ…」
困りましたねぇ、と呟く沙慈にすまないな、と返す。
「俺、探してくるよ。心配かけて悪いな」
「いえ…。すれちがいにならないで下さいね」
優しい言葉をもらい、別れの挨拶をして、俺は来た道を戻る。
「…ったく、どこ行ったんだよ。刹那…」
滅多に使わない傘を差して、マンションから出た。
今までボイコットされたことなかったのに。
――――やっぱ俺のこと嫌いなのか…?
その不安を胸に抱えたまま、刹那を探しにかかる。
もしも、独りで居るのなら、きっと寂しいはずだ。
俺も独りは寂しいよ。
だから。
一緒に居たい。刹那…、会いたい。
もう、俺らは独りじゃないよ。
傘が雨を弾く音が、寂しさを募らせた。
幸運を呼ぶものだと聞いた。
だからきっと、彼にも幸せが訪れるかも、と。
信じて疑わなかった。
昨日の天気予報通り、今日は雨。
しかし、探さなければ。幸運を。
その想いにとり憑かれたように、目を凝らす。
時間は11時を過ぎた。今頃、彼はマンションだろう。
雨に打たれ、風が吹き付ける。
「…っくしゅっ!!」
そろそろ風邪を引いてしまうかもしれない。
雨で通行人が居ないのが幸いか。
鼻をすすって、もう一度目を凝らした。雫が髪を伝って視界を遮る。
ロックオンは独りが嫌いらしい。いつも誰かと一緒に居る。
俺も独りが嫌いだけど、人と馴れ合うのは好きじゃない。
俺を頼ってくれたのは、嬉しい。でも、俺はロックオンを慰めたりすることはできない。
できるのは、願うことだけ。幸せを願うしかない。
だからロックオン、これを見たら、お前も幸せになるだろうか。
「…あった…!」
3時間半もかかってやっと見つけた。
「せーつなっ。何、してんの?」
雨が止んだ。のは間違いで、彼の傘が俺の上に差してある。
「ロックオン…何で、ここ…?」
いつもの笑みで、ロックオンは微笑んだ。
「勘、かな?…刹那はこの公園、好きだろ?」
「…ロックオン」
そこまで俺を見ていたのか。
「ほら、泥だらけになってる。…何してたんだ?」
「ん…」
恥ずかしい、けど渡さないと。
「これ…」
ロックオンの手に握らせて、走り去る。
絶対、顔が赤い。
冷たい雨が、熱を奪っていった。
走り去った刹那を呆然と眺め、手に握らされたものを見る。
四ツ葉のクローバー。
それは、幸運を意味し。
十字架をも意味する。
その想いを汲み取って、笑みが溢れた。
幸せは、君の側で。
君と逢えた。それが、幸運。
「…俺にとって、お前が俺のクローバーだよ」
だから刹那、今日はずっと一緒に過ごそう。
俺は、刹那のマンションへと足を踏み出した。
END
シリアス続きでスマン…;-)
オマケ↓ギャグ調に。
ピンポーン
開かない。
ピンポーン、ピンポーン
―――――開かない。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン
―――――まさかっ
沙「すみません、刹那さん、まだ帰ってませんよ?」
――――ッ!!してやられた…ッ(泣)
オマケ2
やっと中に入れたロックオン。二人で風呂へ。
「知ってたかぁ?クローバーはアイルランドの国花なんだぞー」
「…へぇ」
「あとな、地域によっては四ツ葉は悪運を呼ぶとか言われてるみたいだ」
「…じゃあ棄てろ」
「…。(可愛いなぁ…v)」
END
武力介入で亡くなった人、そしてテロで命を落とした数多くの人々へ。
クローバーは十字架、つまりキリスト教を表すこともあるようです。
刹那は何も知らないけど、ロックオンは知ってます。
その後、ロックオンはもらったクローバーをアイルランドに向けて飾りました。
追悼の意味を込めて。
2008.5.17.