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□終わりと始まり
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ピッ、ピッ、と規則的に機械音が聞こえる。
それが、自分の心臓の音だと気付くのに、そう時間はかからなかった。
「…那、っ刹那!」
目の前には、マリナ・イスマイール。そして、王留美。
「…お…、俺は…」
しばらく使わなかった声帯が、音をつむぐのを拒否している。
「…貴方は生き残ったのです」
言葉にするな。
そんなの、わかりきっている。
アイツの側に行きたいのに、行けない悲しみが、お前に分かるか。
「…そして、アザディスタンで貴方を療養してもらうことにしました」
「っ待て!」
ズキ、と身体中が痛む。
「…だ、嫌だ…アザディスタンは、嫌だっ」
「決定事項です」
抑揚のない声で、王留美は事実を告げる。
「ここに居る、第一皇女と貴方は知り合いでしょう?ガンダムマイスターは別々に収容しなければ、地球連邦にソレスタルビーイングの場所を知らせることになります」
「…っそれでも、」
他に場所はいくらでもあるはずだ。
「…アレルヤ・ハプティズムはこちらで預からせて頂きました。彼が一番、重症でしたので」
その時、初めて他人のことを考えた。
―――アレルヤは生きている。
「ティエリア・アーデは」
「……ナドレは大破しました」
その言葉が指す意味は。
「死んだ、のかっ……」
王留美は黙って目をそらした。それは、肯定の意。
「ッ…!!」
彼奴が死んでから、涙腺が緩みっぱなしだ。
ティエリア・アーデのことなんて、何も思っていなかったのに。
――――――何故、涙が。
「また、何かあれば、エージェントが伝えに来ますわ。…では、失礼致します」
立ち去る王留美に、もう声をかけることができなかった。
「刹那…」
――マリナだ。
「何故、お前が」
メールで別れは告げたはずだ。なのに。
「仮だけれど、わたしもソレスタルビーイングに入ったの。地球連邦にバレない程度なら、援助が出来るわ」
「――…そう、か」
涙が止まらない。
アレは、戦争だった。
一体どれだけの犠牲が出ただろう。
「ラッセ…、ティエリア…」
確認はできなかったが、トレミーの皆は無事だろうか。スメラギさんは、クリスは、フェルトは、リヒティは。
たくさんの人が、ソレスタルビーイングの武力介入で死んだ。
一度の介入で、約300人は死んでいく。
俺たちは一体、何人殺しただろう。
その報い、か。
――――覚悟はしていた。
ロックオンに何度も確認されたから。
「…刹那」
触れようとしたマリナの腕を振り払う。
「俺に、触れるな」
その後のことは覚えていない。そのまま眠りについたからだ。
夜、ふと目が覚めた。
外から灯りが洩れている。クルジスに居た頃は、そんなことなかった。
そして、未だになかったはずだ。
窓に近寄ると、各家に灯りが見えた。
「太陽光、エネルギー…」
アザディスタンも、手に入れたというのか。
これで、暮らしは豊かになる…
そう思うと、涙が溢れた。
このエネルギーさえあれば、クルジスは戦争をすることはなかった。
このエネルギーさえなければ、戦争をすることはなかった。
イオリア・シュヘンベルグを、俺はどう考えていいかわからない。
感謝すればいいのか。
憎むべき存在なのか。
もし、時間を戻すことが出来るなら、俺はイオリアと話してみたい。
――――――叶わぬ願いだが。
それから、4年後。
世界は統一を始めたが、点々とある国は地球平和維持軍を良しとはしなかった。
そこで起きる紛争に、武力介入するという。
「…ミッションを開始します」
「…刹那・F・セイエイ、出る」
END
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力尽きた……
2008.5.16.