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□目を閉じればきみが浮かぶ。だから今日は、眠れない。
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夜だった。
戦闘が激しくなる前に、と両親と妹の墓へ花を捧げてきたところだ。
視線を上げれば満天の星空で、平和な夜だった。
近くのホテルに一泊しようとチェックインしたときに、端末に緊急暗号通信が届いた。まさかミッション?と焦りながら開くと、刹那とティエリアの連携ミッション開始の連絡だった。
無事に終わるといいけれど。
そう願うのは、ミッションを行うのが刹那という存在だからだ。
人の話は聞かない、勝手をする、その他もろもろ。そんな刹那だからこそ心配で、愛しい。
ホテルは豪華ではないが質素でもなく、セレブのホテルに慣れ始めた自分には合っているように思えた。
やはり空は綺麗に星が見えていて、しかし頭に浮かぶのは刹那のことばかり。
大丈夫だろうか、なんてパイロット適性テストに合格した刹那には愚問か。
寝て忘れてしまえ。
自分は今日、久しぶりのオフなのだ。
ミッションとか、ガンダムマイスターとか忘れてさっぱりしよう。
そう思っていたのに。
刹那は幼い。
わかっている。
自分が彼をエイミーみたいに思ってしまっていることは。
だからこそ余計に忘れたいのに。
「…あー、くそっ!!」
髪をがしがしと掻きむしって、ベッドへダイブする。ふかふかで良い匂いのするベッドは気持ち良い。こんな気分のときでなかったら、すぐに寝ていただろうに。
「…刹那ぁ」
愛しい。
そう思ってしまう程に近くに居すぎた。
大切なものはひとつでいい。どうせ全部守れはしない。そう思っているのに、大切なものばかり増えていく。
一度(ひとたび)会いたいと思ってしまえば、もうそれしか考えられなかった。
泊まるのはやめよう。
拠点の無人島へ帰ろう。
そう思ってからの行動は早かった。
瞬間的にチェックアウトして、外に停めた車へ乗り込む。エンジンをふかしてライトを付ければ、眠気なんて感じない程に目が冴えていた。
そのとき、端末がデータ受信の音楽を鳴らす。内容はエクシア及び刹那のミッション放棄、戦術プランの変更予定が書いてあった。
その予想通りの展開に、思わず刹那らしいと微笑んでしまうのは、幾度となく経験してきたこと故に仕方のないことだ。
アクセルを踏んで、拠点ポイントへと車を走らせる。
叱ってやらねば。
ミッションの放棄は戦争根絶の近道ではないのだ、と。
わからせてやらねばなるまい。
ふ、と微笑んだその時、刹那に会うことを喜んでいる俺が居ることに気付いて、はぁ、と溜め息をついた。
2010.2.15.
2010.3.20.up
title:確かに恋だった