V
□人柱アリス
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1番目。
刹那・F・セイエイ。
『世界を作って』
その一言で、彼は不思議の国へとやってきました。
その国は、とても自分の夢とは思えないほどおかしな国でした。
それは彼にとっては耐えられないモノで。
「夢とはこんなものなのか!?」
彼は“夢”に怒鳴りつけました。
“夢”は答えられませんでした。自分は“夢”であって現実とは違うのだから…。
「こんな夢なら、目覚めてしまえ」
“夢”が願った不思議の国は、彼の凶器でズタズタに切り裂かれました。返り血を浴びた彼は、真っ赤な道を作りながら森へと向かって、2度と出てくることはなかったのです。
切り裂かれた国を見て、
『こんな世界を願ったんじゃないんだ』
そう思った“夢”は、新しいアリスを探します。
2番目。
ロックオン・ストラトス。
彼はすぐに新しい国を作り出しました。
歌にまみれた世界をです。
彼自身ウタうことを得意としていたからでした。
“夢”は嬉しく思いました。
自らが存在していることに、幸せを感じていました。
そのアリスを良く思わない男が居ました。1番目のアリスを憎んでいた男でした。
「どうせまた壊すに違いない」
バン、と放った銃弾は、彼の体を貫きました。彼は残されたわずかな時間で薔薇を咲かせてこう言いました。
「こんな世界で、いいものか!」
彼はその意思を、薔薇に託しました。
“夢”はまた、アリスを探します。
3番目。
ティエリア・アーデ。
彼女はまだ、幼い娘でした。しかしその美貌は、この世界に無いものだったのです。
なので国の人々はその美しさの虜になり、チヤホヤと育てられた彼女は壊れていきます。
「みんな、わたしの言うことに従いなさい」
彼女は国の、女王となりました。
“夢”は思いました。
僕が消えたくないと願ったから、この世界は崩れていくの?
だからアリスたちは壊れてしまうの?
“夢”にアリスを止める力は、もう残されていませんでした。
“夢”はまた、アリスを探します。
4番目。
アレルヤ・ハプティズム。
ハレルヤ・ハプティズム。
今度のアリスは双子でした。
好奇心に勝てず、“夢”の世界を訪れました。
1番目アリスが引いた血の小道を歩いて。
『森の出口に薔薇がある。その薔薇に道を聞きなさい』
2番目アリスの薔薇とお茶会を開き。
『疲れたでしょう。お茶をお飲み。そして王宮へ行きなさい』
3番目アリスから届いたハートのトランプの招待状を手にして。
『早くこの“夢”から覚めなさい。“夢”に捕まる前に…』
楽しそうで、一番アリスにふさわしかったのに。そうやって不思議の国で生きていたけれど。
「僕たちはここに居るべきじゃない」
「俺たちは夢から覚めなければ」
『帰るには、どうしたらいいの?』
“夢”は困りました。
もう、一人で居ることが寂しくて、アリスが居ない世界を一人では楽しめなくなっていたからです。
“夢”はアリスを不思議の国へ閉じ込めました。
そして、気付くのです。
嗚呼。
壊れていたのは、僕なんだ………
「遅かった…」
「また、次のアリスがやってくる…」
「早くこの夢から目覚めさせて…」
あるところに小さな夢がありました。
誰が見たのかわからない、それは小さな夢でした。
小さな夢は思いました。
このまま消えていくのはいやだ。
どうすれば、人に僕を見てもらえるだろう。
小さな夢は考えて考えて、そしてついに思いつきました。
人間を自分の中に迷い込ませて、世界を作らせればいいと。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>人柱アリス
2009.4.5.