2009S誕/BOOK

□It is crazy about you.
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予定通りに新しい島に着いた麦わら一味。
その港で、ルフィは町への入り口を仁王立ちで眺めているのであった。
いつも通り、冒険に胸を躍らせて走って行きたいところなのだが、今回は少し勝手が違う。
今夜、「皆で」行う宴、そしてその宴には主役となるサンジの為に各自がプレゼントを持ち寄ることに昨日の会議で決まったのだった。



「アンタ、彼氏の誕生日よ?ちゃんと分かってる?」



そんなナミからの冷やかしに失敬だな!と一喝したものの、ルフィはどうしたものかと首を捻るのだった。
これまでのクルーの誕生日は、当日の主役を囲い、宴をしてそれで良かったと思っていたのだ。実際、自分も楽しく、その日の主役も勿論の事楽しんでいたのは見て取れていたから。
しかし、こう改まって「贈り物」を用意するとなると勝手が変わる。
こういうのはウソップやフランキー、ましてや犬猿の仲であるゾロに聞くよりも、日頃からハートを飛ばしているナミやロビンに聞いた方が、サンジが喜びそうな回答が得られそうなのはさすがのルフィでも分かる事で。



「でも、アイツらに聞くのもなーんか癪に障るんだよなー。」



―…本当はおれなんかよりも、女の方が好きなんだろう?

何度もサンジを前にして問おうとしたその言葉は、サンジが用意してくれるとても美味しいお菓子と一緒に飲み込まれ、いつも聞けずにいる。
聞いてしまえば最後、お菓子を食べるおれを見るあのサンジは遠くへ行ってしまうのだと思うと、ルフィはいつも胸にしくしくとした痛みを感じ、そしてサンジの甘いお菓子を食べながら泣きそうになる。それがサンジにばれないようにルフィは何とか自分の気持ちも誤魔化して取り繕うしか方法は無かった。



サンジの作る料理やお菓子も好きだけれど、
それ以上に自分を見て笑うサンジが大好きだったから。


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