BOOK

□リュウグウノツカイ
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5月の朝。

「ん…」

りんごはまだ眠っていた。

『ガツッ』
「んがっ!」

何かが勢い良くりんごの頭にぶつかった。

「ん゙ー…」

苦しそうな声をあげた後、パチ、
とりんごは目を開けた。

何かが激突した頭をボリボリと掻きながら起き上がり、
隣に目をやると、
みずきが寝ていた。

りんごの頭に激突したのは、寝返りをうったみずきの頭だった。

「ふぁ…」

りんごは大きくあくびをした。

こうして、りんごの日常は始まる。





朝日の差し込む階段を降りると、
少しひんやりとする廊下に朝ご飯の匂いが漂ってきていた。

コンソメとケチャップと焼いた玉子の匂い。

りんごは今朝の朝食が洋食だと気付いた。

手伝いをしようとキッチンに入ると、

「はよ。みずきは?」

と、ありさはこちらを振り返らずにりんごに話し掛けた。

ありさはフライパンを忙しなく動かしている。

その隣ではスープ鍋から湯気が上り、
三枚用意された皿の上にはレタスとベビーリーフのサラダ、
アーモンド型にきれいに盛られたピラフ。

「はよ。もうすぐ降りてくるんじゃない?」

りんごはスープカップを用意しながら答えた。

カップにスープを注ごうとしていると、

『ムニッ』

さっきみずきの頭が激突した辺りに、
柔らかいものが乗った。

みずきのほっぺただった。

みずきはりんごの頭にほっぺたをぐりぐりとすり付けた。

これが、みずきの「おはよう。」

「はよ、みずき。」

「ねぼすけー。起きたか。」

オムレツを一枚の皿に盛り付けたありさに、
みずきは軽くハグをした。

これも、みずきの「おはよう。」

「はい、おはよ。」

ありさはポンポンとみずきの背中を叩きながら言った。

「「いただきまーす。」」
ダイニングテーブルに並んだ朝食を三人で食べる。
 

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