焔の子供と夜の軍人
□廃墟の城
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声が聞える。
「な〜るほど、音素(フォニム)振動数まで同じとはねぇ。あちらとは同じとは言わないまでも似通っている場所もある。流石、双子と言ったところですねぇ」
「そんな事はどうでもいいよ。奴らが此処に戻ってくる前に情報を消さなきゃいけないんだ」
いったい何を言ってるんだ。とルークはズキズキする頭を押さえるように、ゆっくりと瞳を開ける。
周りは緑の光に溢れていて、見慣れない譜陣が体の下に広がっている。
まだ、声の主達はルークが気が付いたことに、気付いていないようで話を続ける。
「そんなに此処の情報が大事なら、このコーラル城を使わせなければ良かったんですよ」
一人の文句にもう一人が仕方ないだろうと溜息混じりに。
「あの、馬鹿が無断で使ったんだ。後で閣下にお仕置きしてもらわないとね」
肩を竦めて、さして興味も無さそうに言葉として吐き出す。
ルークはなんとか意識を、しっかりさせようと頭を振る。
「…ほら、こっちの馬鹿もお目覚めみたいだよ」
声に顔を上げる。そこに立っていたのは六神将のシンクだった。
そして、ふと思う。
閣下≠チて…誰だ。
つまり、六神将の上には誰かがいて、今回の事を指示しているものがいるっということだろう。
「いいですよ。もう、こいつの同調フォンスロットは開きましたから」
ルークはあの広い部屋にあった大きな音機関の中にいた。
ふふん。と言わんばかりの声とともに、椅子がふわりと滑らかに移動して一度、シンクの前で止まり、ディストは情報を解析したいと飛び去ってしまった。
それにシンクはやれやれと息を吐き、気が付いたルークに目もくれず背を向ける。
「…お前ら…一体…俺に何を…」
「答える義理はないね」
「…レプリカ…の…」
「…さぁね…聞かれて答えるとでも…?」
シンクは馬鹿にしたようにフンと鼻で笑った。
それに苛立ったルークは、まだ思うようにいかない体を無理矢理起こし、シンクに向かって行こうとしたとき、ルークの横を金色の何かが通り過ぎる。
「…ガイ…!!」
通り過ぎた金色はガイだった。
ガイは剣を抜いてシンクに斬り掛かる。
シンクは辛うじてガイの剣を避けたが、持っていた音譜盤(フォンディスク)を落としてしまう。
驚きで倒れかけたルークを、後から追ってきたピオニーが受け止め座らせてやり。
落ちていた音譜盤(フォンディスク)を拾い上げ、興味深そうにピオニーはそれを手の中で遊ぶ。
シンクは取り戻そうとピオニーに向かうが、その拳はピオニーには届かかった。
ガイが素早く間に滑り込み、剣で拳を受けとめて弾き飛ばす。
その拍子に偶然、シンクの仮面に剣の端があたり、シンクの仮面が弾けとぶ。
「…あれ…?…お前…?…」
「……おいおい…笑えないぞ…これは…」
「……なん…で…」
シンクの素顔を見てしまった三人はまったく別の言葉を口にする。
「ガイ!どうしたの!」
追い付いてきたアニスの声に気を取られた隙をついて、シンクはガイに蹴をいれる、ガイは受け身を取り下に巧く着地をする。
シンクは仮面を拾い忌々しそうに。
「くそ…他の奴らも追い付いてきたな…!」
「…逃げるのか…」
「今回の件は正式な任務じゃないんでね」
残念だけどね。と嘲るように笑い吐き捨てるように。
「振り回されてゴクロウサマ」
消えていった。
ルークの周りにあった譜陣が消えて、光がゆっくりと納まっていく、ジェイドが音機関を止めたのだろう。
座らせたルークに手を貸してゆっくりと立たせてやる。
「…怪我は…ないな」
「…あれは…一体…」
「…さぁな、俺には何とも言えない」
ルークの問いにピオニーは答えてやれなかった。だが、見たままが本当だとするなら。
ガイに声をかけているイオンに目を向ける。
「どうしました。ガイ?」
シンクの消えた場所から目を離して、心配しないようにとイオンに伝える。
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