焔の子供と夜の軍人

□廃墟の城
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それよりもアニスに庇う≠ニ思われてしまっていた自分が情けない。
だが、ルークはともかくアニスは目的ではないために直ぐに降ろされてしまった。

「いったーい!?ひどいよ。アリエッタ!」

「ひどいのアニスだモン!アリエッタのイオン様をとっちゃったくせに!」

少し噛み合っていないのではないのだろうか。
アニスは強く打ち付けた尻を撫でながら、アリエッタに文句を言うとアリエッタは持っていたヌイグルミを、強く握り締めてアニスに食って掛かる。

「アリエッタ!違うんです。貴女を導師守護役(フォンマスターガーディアン)から遠ざけたのはそういうことではなくて…」

二人を、アリエッタを止めようとイオンは口を開くがそれ以上の言葉が出なかった。
アリエッタに説明する言葉が無いのだ。真実を話す訳にはどうしてもいかなかった。
けれど、知らないままにさせておくにはあまりに可哀相だった。
イオンが言葉を選んでいるうちにジェイド、ガイ、ティア、ピオニーの四人が追い付いた。
魔物に捕まっているルークを見つけ。

「ルーク!?」

「もう…ドジね…!」

「おーい、大丈夫かぁ?」

口々に声をかける。ジェイドだけは眉間に皺を作り、息を吐くだけに止めていた。
ルークが四人に大丈夫と言おうとした瞬間、フレスベルグがルークを放した。
体は重力に逆らう事はなく下に落ちていく。
突然の事でルークは小さな短い悲鳴を残して、視界から消えてしまった。かわりに宙に浮いた趣味の悪い椅子が掠めていった。

「あ!大変ですの!」

ルークに気をとられているとアリエッタは整備隊長を連れて、ライガと共に軽やかに逃げていってしまった。
残された面々は茫然としていたが、ジェイドが非常に面倒臭そうに。

「ディスト(あの馬鹿)までからんでいましたか」

「何、する気だ。あの馬鹿」

まったく、オブラートとに包む気が無いピオニーと一応のオブラートに包んだジェイドだが、ボロクソに言っている事にはかわりない。
そんな二人に半眼を向けたガイにジェイドは、なんですか。と笑みを向けたがなんでもないと首を振った。因みに二人は言葉を発してはいない。

「大丈夫かな…もう…」

「ん?ティア、どうした?何か言ったか?」

目ざといのか、ちゃっかりしているのか、ティアの呟きを聞いていたガイが声をかけるがティアは少々、頬を染めて慌ててなんでもないと首を横に振った。

「それよりも早く、ルークを整備隊長を助けましょう」

話をすり替えるように言ったティアにピオニーは肩を竦めた。
ジェイドのもとにアニスが駆け寄り。

「私のせいです。…ふみゅ〜…もう、悔しいよぅ!アリエッタのばかぁ!」

あまりに悔しいのかアニスは地団駄を踏んでいる。
それを慰めるように。

「まぁまぁ、落ち着いてください。あの様子なら命をとるつもりはなさそうです」

命をとるつもりであるなら、さらうなどと面倒な真似をしないだろう。
ピオニーはそれに同意のように頷いたがでも、と前置きをし。

「…もし、命に危険を感じるような状況なら」

「……………さぁ…?」

明確な答えは口にしなかったが、否に長い沈黙が逆に怖い。
しかも、座りを直した眼鏡は光を反射し、まるで表情は読めないくせに口元が笑みを浮かべているのだけが、わかって非常に怖い。
この人物が敵でなくて良かったと思ったのはガイだけではない。
ルークを傷つけようものなら口では言えない惨劇になるだろうし、もし相手がディストであるなら、この大人二人は手加減なんてしないだろう。

「イオン様はまだ、こちらの手にありますから」

大丈夫でしょう。とコホンと咳を吐きながら、己の手でフォローを入れる。
六神将が今、一番必要としているのは導師イオンなのだ。



ボーとしたようにただ、暗やみを漂う。
体は動かせない、指もそれどころか声も上げることは出来ない。けれどいやに意識だけはしっかりとしていた。




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