焔の子供と夜の軍人

□廃墟の城
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カイツール軍港から南西に移動していくと、海を見渡せるように小高い丘にボロボロの今にも朽ちてしまいそうな、少々小さい城が聳え立っていた。
周りは薄暗くボロボロの城を更に怪しく見せている。
ルークはその城を見上げながら。

「ボロボロじゃん…なんか出そうだぞ」

「どうだ?何か思い出さないか?」

ガイがルークに問い掛けるが、ルークはもう一度城を見上げて首を傾げた。
ファブレ公爵の子息が発見された場所ではあるが、ルーク自身は此処に来たことなどありはしない。
思い出す事など本当はない。それでも何か引っ掛かるものはないかとルークはコーラル城を見つめた。

「ルーク様は昔のこと、何も覚えてないんですよね?」

アニスの言葉に頭を掻きながら思い出せるところまで思い出してみるが、おぼろげすぎて言葉にするには難しすぎた。

「何もってわけじゃねーけど…バチカルに居たって記憶はねーんだよな」

「ルーク様、お可哀相。私、記憶を取り戻すお手伝いをしますね!」

何故か張り切っているアニスにルークは、あ、ああ。と頷いた。ルーク自身はそれほど望んではいないのだが。
ピオニーとジェイドは一連の会話を聞きながら、似たような仕草で眼鏡の座りを直した。
拾われたばかりの頃、人に怯えていたルークを知っているため、二人はルークの記憶が戻るのが不安であり心配だった。当時の記憶に恐怖し、壊れてしまうのではないかと。

「…おかしいわね。もう長く誰も住んでないはずなのに人の手が入っているみたいだわ」

「魔物、居るですの…。気配がするですの…」

ティアが改めてマジマジと城を見ると、確かにボロボロで手入れはされていないが、明らかに人の出入りした形跡が見える。
放棄されてから随分と年月が経っているはずであり、こんなところに持ち主の公爵が来るはずはない。
魔物の巣になっているのが何よりの証拠の気もするのだが。

「整備隊長さんとやらは中かな?」

「入って探してみればわかるだろ」

直ぐに見つかるとは思えなかったが、入らないことには始まらない。
取り敢えず城の中に入ることにした。
中も外と同じようにボロボロで、今にも崩れてしまいそうで、埃が厚く絨毯のようになっている。
それでも所々に人の手が見えるのは、気のせいではないだろう。
ルークはそんな城の中を興味深そうに見回していた。
入り口直ぐの場所に飾りだろうか石像が、不自然に置かれていた。

「ルーク、あんまり離れるなよ」

「幽霊……なんてのが出るかもしれないぞ」

ガイに子供扱いとピオニーのからかいに、ムッとしたルークが文句を言おうと振り返った瞬間。

「ルーク!?」

誰よりも早く反応したのはジェイドだった。
素早く槍を取出し、投げ付けるが本体である石像に当たらずに、台座を破壊するだけにとどまった。

「ルーク!後ろ!」

「さがってろ!」

「えっ!?うわぁっ!」

「…おっと…」

ジェイドの動きとティアの声に反応し、振り向きざまに剣を抜こうとしたが、それより早くピオニーに肩を掴まれて後ろに押される。
ピオニーは強く床を踏み締め、拳で石像の腹部分を下からえぐるように打ち上げ、蹴り落とし動かなくなったところを、追討ちにジェイドのフレイムバーストが襲い掛かる。
ルークはガイに受けとめられており、二人の素早さにまったく手出しができなかった。

「だから、言っただろ」

まるで何事もなかったように埃を払うように、手を叩きながらいったピオニーにルーク驚きのままにコクコクと頷いた。
ルークが無事であるのを確かめてから、ジェイドは打ち倒した石像を簡単に調べる。

「侵入者撃退用の譜術人形のようです。…これは、比較的新しい型の物です」

見た目は城と同じようにボロボロではあったが、最近に造られたものであるのは明らかであった。



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