Present

□4000hitフリー小説/睦月様
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空が白み始めた頃、僕は大量の朝刊が入った鞄を肩から提げて人気のない道を走っていた。

家が新聞店だから手伝っているけど……正直、このエリアで新聞は配りたくない。

だって、ホストやホステスが働く大人なお店が軒を連ねてるから、いつ酔っ払ったお客や従業員に絡まれるか分かったもんじゃないしね。

この朝刊を配り終えたら、エリア変更してもらおう。

速歩きで朝刊を配っていると、一軒のお店からスーツを着崩したホストが数人、出てきた。

仕事終わりなのか、欠伸をするホストや軽い口調で電話をするホストと様々…。

「う〜ん。やっぱり、近寄り難いよな」

なんて呟いていたら、もう一人のホストがけだるそうに店から出て来た。

見た目、さっきの人達より若い気が……って!?

「えっ、ええぇーっ!? 嘘っ、森島くんっ!?」

僕が思わずそう叫ぶと、彼はガバッと振り向き目を見開いた。

森島くん――彼は、僕と同じ高校のクラスメートで、女子からの人気が高くスポーツ万能・成績優秀なんだけど……何故、ホストを?

理由が知りたくて僕から歩み寄ろうと足を踏み出したら、森島くんは慌てて僕に近付き路地裏へ引っ張り込んだ。

「おいっ……何で、中村がここにいるんだよっ!?」

「え、あの僕は新聞配達をしてて、たまたまここを通ったら森島くんがあの店から出てきて……って、何で森島くんはあの店から出てきたの?」

森島くんは暫く黙った後、チッと舌打ちをして口を開いた。

「…一人暮らし、してんだよ。手っ取り早く生活費を稼ぐにはこういう仕事が一番だと思って、年齢偽って働いてんだ」

何だか、学校で見る森島くんと横に立っている派手なスーツを着た森島くんが別人に見えて、何とも言えない気分だ。

「まさか、同じクラスの奴に見られるとは思ってなかったぜ…」

「僕も…まさか、森島くんがホストをしていたなんて驚きだよ!でも、違和感ないよね?森島くん、カッコイイし…」

そう言って森島くんを見ると、耳まで真っ赤にしながらそっぽ向いていた。

「……森島くん?」

「なぁ…、中村。この事、クラスの奴や先生には絶対に言うなよ?」

「もちろん!誰にでも秘密の一つや二つ、あるもんだし」

それに僕、こう見えて口堅いんだーなんて言ってたら、不意に目の前が暗くなり…。

「んンっ…!? んんーっ!!」

森島くんに、キス…されていた。

しかも、ぬめっとした森島くんの舌が僕の咥内に入ってきて、縦横無尽に暴れる。

「んぅ……ふっ…ぁ」

なっ、何でっ!? とか…男同士だよっ!? とか…色んな疑問がぐるぐると頭の中を駆け回るけど…初めての濃厚なキスと、苦いお酒の味がどうでもいいと流していく。

長い、長いキスが終わった頃にはすっかり腰砕けになっていて、僕は地面に崩れないよう森島くんにもたれかかった。

そんな僕を見た森島くんはフッと微笑み、優しく頭を撫でてくれる。

ふわっとした意識の中…森島くんが、おもむろに口を開いた。

「もし、中村が俺の事をチクったりしたら…」

「………したら?」

「さっきのキスの続き……してやるからな」

「え…、続きって…?」

今度は意地悪な笑みを浮かべる森島くんに、僕の顔は真っ赤。

「覚悟、しておけよ?」

囁くようにそう言われ、おでこに軽くキスをされ……僕は森島くんが去った後も暫く動けないでいた。


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