Season

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「お疲れ様です。」
俺より、年上だろうと思われる人にそう挨拶される。相変わらず、年上に敬語を使われるのだけは慣れない。
「ぁ。お疲れ様、っす。」
言って、とりあえず会釈をする。
俺の名前は、『吉良秋之』[きら あきの]。
今、日本中で大人気のSeason(シーズン)の片割れ。
「あ、アキユキ。明日のスケジュールだけど。」
あ、アキユキってのは俺の芸名。秋之って書くから"アキユキ"。
そして、俺を引き止めたこの人は俺達Seasonのマネージャーで『篠原駿』[しのはら しゅん]さん。
「明日は、午前だけだから。午後からは、学校に行ける。」
手帳を見ながら、テキパキと指示を出してくれる。よく分かんないけど…多分カナリ出来る人なんだろう。
「あー!!秋之いたー!!」
遠くから、誰かが叫んで俺の方一直線に走ってくる。そして、案の定…衝突。
「っつー…。」
「秋之ぉ、なんで俺んこと置いてスタジオ出てくんだよー。」
俺の上に乗っかったままで抗議をしてくるこの男は、Seasonのメイン(?)の『宮沢夏衣』[みやざわ かい]だ。
「ナツイ…いいから、邪魔。」
ナツイってのは、こいつの芸名。夏衣って書くから。
夏衣は俺の上から避けると、俺の手を引っ張って起こしてくれた。
「ありがと。…てか、こーゆうとこで秋之って呼ぶな。」
仕事場で名前を呼ばれると、自分が自分じゃない気がして嫌だ。
「やーだ。」
なのに、こいつは収録が終わって周りに人がいなくなると絶対に名前で呼んできやがる。
「じゃ、篠っちー。俺ら帰るねー。」
夏衣がそう言ったかと思うと、腕をグイッと引っ張られた。
「っちょ。ナツイ!!…引っ張んなよ」
俺の言葉に気にせず、俺の腕を掴んだまま外に出られた。
「夏衣。俺、これから学校行くから…」
「っえ!!秋之、俺ん家来ないの?」
さも、行くのが当たり前のように言われた。
アホか…。
「あんなぁ…第一に、約束してねぇ。んで、俺のが年上だ。呼び捨てすんな。」
こいつ、年下のくせに生意気。俺より、身長でけぇし。
「秋之。ホントに行くの??」
…呼び捨てだし。
てか、そんな寂しそうに見られても。
こいつのファンなら、一発で落ちてるな。…まぁ、俺はこいつに興味ねぇから落ちねぇけど。
「行く。夏衣も、学校行ったら??」
とりあえず、勧めてみる。じゃなきゃ、開放してもらえなそうだ。
「ヤダ。行っても、みんな普通にしてくんないもん…。でも、秋之はッ」
「秋之っ!!」
夏衣が何かを言おうとした瞬間に、俺が違う誰かに呼ばれた。


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