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「…寒い」
「うっそ。適温じゃね?」

隣で晴紀がズビズビと鼻を啜っている。
なんか、こんな晴紀の姿を見れんのも中々ないから新鮮な感じがする。
いつもは、俺のが「あちー」とか、「さみー」とか文句ばっかだし。

「…晴紀、風邪?」
「なんで?」
「ん、晴紀が寒いとか言うの、あんまないじゃん。だから」
「んー、まぁ」

そういえば、少し鼻声な気もする。
晴紀は、弱音?とか吐かない奴だし、文句とかも言わない奴だから、すこし…てか、結構自信なくす。
俺って、そんな頼りねーのかな?

「…伊武騎、なんか怒った?」
「べつに」
「なぁ、機嫌治して?」
「べつに怒ってないし」

あー、俺の悪い癖。なんか、俺が勝手に拗ねて最悪。晴紀はなんも悪くねーじゃん。
しかも、自分でそれをわかってるからタチ悪ィ。

「伊武騎、俺風邪かも」
「…………」

晴紀はいっつもそうだ。すげぇ悔しい。
いっつも俺の欲しい言葉をくれる。

「へー。頭いい奴は風邪ひいて大変だな。俺はバカだから風邪とかひかねーし!」

そっぽを向いて、そんな悪態しかつけない。
マジで自分のこの性格嫌いだ…。ホントは素直に心配したいのに。

「晴紀…早く、よくなれ、よ」

俺なりに精一杯の素直。
こんなんでいっぱいいっぱい。


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