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自分の席で頬杖をつきながら視線の先にいる男を睨みつける。
これでアイツが今日何回目の呼び出しになるかなんて、もはや誰も数えてなんかいないだろう…俺以外は。
後輩らしき女の子に呼び出された俺の恋人。
困惑したように頭を掻きながらも、満更ではなさそうにその女の子について行く晴紀の姿にイライラを募らせる。
「……っチ」
軽く舌打ちをして気を紛らわしてみるものの、近くにいた奴がビビるだけで俺の気が紛れることはなかった。
「伊武騎っ!」
イラついている俺の肩を軽く叩いてきた人物に視線を送る。
周りの奴らはビビって話掛けてこないと踏んでたから、普通に声を掛けられたことに驚いた。
「愛実」
「なんか暗いよ?大丈夫?」
心配そうに覗き込んでくる愛実。
美人な顔がドアップにあって思わずときめいちまったけど、それを誤魔化す意味も込めて頭を振った。
大丈夫…と、小さく言うと、今度は耳元でこっそり
「木村くんにチョコ渡した?」
「っ」
言葉に詰まってしまっては、渡せていないというのが丸わかりになってしまう。
そう気付いたときには既に遅く、呆れたように溜息を吐かれてしまった。
…それもそうだ。
俺の鞄の中に入っているチョコは、昨日愛実に教えて貰いながら作った手作りチョコなのだから。
男の俺が手作りだなんて気持ち悪ぃかもしんねぇけど、市販のやつだとどうしても他の女子には負けの気がして手作りにしてしまった。