Short Series
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ザーザー、と、バケツをひっくり返したような雨が振り続ける校庭を、自分の席に座りながら見る。
地面に叩き付ける音で、雨粒が相当大きいことがわかった。
「雨なのに暑いとか…」
喋るのも億劫になって、途中で黙る。
チラリと教室の隅に目をやれば、クラスメイトに囲まれた朋の姿が目に入った。
暑くてただでさえイライラするのに、朋のそんな姿を見たら、余計にイライラが増す。
勢い良く立ち上がれば、椅子が盛大な音を奏でて倒れた。
周りの視線が集中するけど、今はそんなことどうでもいい。
「あれ?拓哉どうしたっ」
「来い」
「えっ、ちょ!痛いって!」
朋の二の腕を力一杯握って、教室から連れ出す。
廊下に出ると、雨が降っていたせいで床がビショビショに濡れている。だけど、そんなこと気にも留めずに歩いていたら右足が水で滑って盛大にコケた。
直前で朋の腕離して良かった。
つか、恥ずかしすぎる。
「いってぇ〜」
「…馬鹿?」
「うるせぇ、どっか行け」
「拓哉がここまで連れて来たのに?」
今度は、朋が俺の二の腕を掴んで立たせてくれた。
そして、そのまま近くの男子トイレまで連れ込まれる。
しかも、個室。
「な、なんだよ」
「拓哉さぁ、ヤキモチ?」
耳元で囁かれてカッと顔に火が点きそうなくらい熱くなる。
その瞬間に、外の雨音がより一層でかくなった気がした。
朋に二の腕を掴まれたままどうすればいいかわからずに立ち尽くしていたら、急に朋の顔が近付いてきて身構える。
「しょっぱい」
「そりゃ、汗かいてるし」
ベロリと首筋を舐められた。
「拓哉。声、抑えててね」
満面の笑みで言うその台詞が何を意味しているのかわかって、更に顔が熱くなる。
ゴソゴソと手を動かしている朋をよそに、外で大きな音を立ている雨に感謝した。