Short Series

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「俺、また身長伸びたんですよ」

ニコニコしながら俺のことを見下ろす。
その自信ありげの顔にムカついて俺は思いっきり顔を背けた。

「へぇ」
「あれ?なんか怒りました?」
「別に」

自然と歩くのが早くなって、俺は斎の一歩前をいく。

「孝四郎さん、わかりやすいなぁ」

小さく呟いた声がしたと思ったら、後ろからギュウっと抱き締められてしまう。

「っわ!ちょ、お前!ここ外」

外で抱き締められたことにビックリしてジタバタと抵抗する。
斎は、そんな俺に構わずに耳にチュッとキスしてきた。ついでにペロリと少しだけ舐められる。
くちゅ、という音が鼓膜にダイレクトに響いて背中がゾクゾクした。

「っ」
「感じた?」
「馬鹿!放せ!」
「はいはい」

素直に解放して、耳まで真っ赤になっているであろう俺の顔を見てケラケラと楽しそうに笑う。
俺より身長がでかくなったっつっても、笑ってるときの顔はまだまだ幼い。

「孝四郎さん、なんで怒ってたの?」
「怒ってないって」
「嘘。眉間に皺寄ってるよ」

そう言って人の眉間を人差し指でグニグニと触る。

「お前はまだまだ成長期でいいな、って思っただけだよ」
「なんだ、そんなこと?」
「そんなことって…お前はいいかもしんないけど、」

そこまで言って言うのを止めた。

自分がどうしようもなく年寄りに感じる…
なんて言えない。

自分の頭をガシガシと掻いて溜息を吐く。
斎は少しだけ首を傾げてから、俺に抱き着いた。

「なんだよ」
「俺は孝四郎さんが好きだよ」
「……………」

道端で堂々と宣言されて恥ずかしい。
斎は相変わらずニコニコしながら俺の顔を覗き込んでくる。

「年齢なんて関係ないからね」
「こんな親父のどこがいいんだよ」

堪らなく恥ずかしくなってきて下を向きながら悪態を付く。

「全部。孝四郎さんこそ、こんなガキのどこがいいの?」
「俺も…全部だよ全部!」

半ば自棄になってでかい声でそう叫ぶ。
斎は嬉しくなったのかガキ臭い顔で白い歯を見せて笑った。

コイツが早く大人になればいいのに、と、そう思う反面、斎が少し成長する度に自分も老けているんだと年齢差を実感する。

「孝四郎さん、大好き!愛してる!」

だけど、斎がそう言ってくれるだけで単純な俺は満足だ。

「俺、孝四郎さんよりかっこいい大人になるから、それまで捨てないでよ?」
「期待しておく」

斎の不安そうに言う自信満々な台詞を聞いて、コイツも年齢差を不安に感じてるのかと思うと安心できた。
小さく笑ってから、斎の制服のネクタイを引っ張って、俺より高い位置にある斎の顔を俺の顔に近付けた。

「斎こそ、俺に飽きてそこら辺の女に手ぇ出すなよ」
「孝四郎さん…可愛い!」

頭をガシッと掴まれて、軽くキスされる。

「ねぇねぇ、孝四郎さんの部屋行きたい」

楽しそうにそう言う斎の言葉が何を意味してるかわかって少しだけ顔が熱くなるのを感じた。

「早く、帰れよ」

小さくそう言いつつも、俺と斎は家までの道を歩き出す。

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