校外学習
□●薄れゆく君
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魔法史に残る大戦から半年。
僕はWWWをロンに任せ、実家住まいだ。
未だにママもパパも兄弟も、みんなして「店は暫く休みなさい」って言うんだ。
「ジョージ、ご飯できてるぞ」
チャーリーの低い声と共に体が揺さぶられる。
僕は目を擦りながらゆっくりと起き上がった。
「おはよ…」
「おはよう、ジョージ」
あの大戦以来、チャーリーもルーマニアから帰ってきていた。
ビル、ロン、ジニーは結婚して家を出ていったし、パースは一人暮らし。
チャーリーは、すっかり静かになってしまった我が家に両親を残すのは可哀想だと思ったから帰ってきたのかな。
僕が居るっていうのに。
「おはよう、ジョージ」
「おはよう、ママ」
「ジョージ、おはよう」
「おはよう、パパ」
下に降りるなり挨拶を交わす。
朝ごはんの匂いが鼻腔を擽った。
いつもの僕の席に座ると、ママが目の前のお皿に目玉焼きを乗せてくれる。
「…ゆっくりね、」
「うん」
二人して眉を下げ、顔を見合わせる。
ママが頭を撫でてくれた。
「いただきます」
すっかり僕の五感はイカれてしまったようで、あんなに大好きだったママのご飯が美味しそうに思えなかった。
でも食べないと家族が心配する。
目玉焼きを少し口に入れる。
咀嚼。
飲み込む。
「う、ぇ…!」
ぐぅ、と胃腸を押し上げられるような気分。
もはや手慣れた様子でチャーリーがバケツを僕の口元に差し出しながら背中を擦ってくれる。
「ハァッ、は…!」
生理的な涙と口元を拭い、顔を上げた。
ママは泣きそうな顔をしている。
そんな顔、させたくなんかないんだ。
「…ママ、」
「いいの、いいのよジョージ…ゆっくり食べられるようにしていきましょうね」
僕が「ごめんね」と続けようとする前に抱き締められる。
どうしてママの腕の中はこうあったかくて泣けるのかな。