校外学習

□●シンメトリー
2ページ/4ページ

WWWは今日も大盛況。

「あら、二人共お揃いはやめたの?」

休暇毎ウチの店に来てくれているホグワーツ生の女の子。
ニコニコと向けられる笑顔が眩しい。
でも俺は知ってる、この子は悪戯グッズでなくフレッド目当てに来店していることを。
正直心の内は汚い感情でぐちゃぐちゃ。
それでも俺は表情筋を総動員して笑顔で言葉を返すのさ。

「何言ってるんだい、髪型も服装もお揃いだろ?」

出来るだけ優しい口調で言いながら首を傾げた。
フレッドは少し奥で馴染みの男の子に営業トークを展開している。

「今までは頭からつま先まで一緒だったじゃない?なのに最近はジョージだけ帽子を被っているから少しの違いでも違和感があるわ」

しかし彼女は、見分けがつきやすくていいけれど、と続けた。
フレッドが好きなくせに今まで見分けがつかなかったのか。

「じゃあ明日からはフレッドにも帽子を被せるよ」

肩を竦めて笑うと、彼女は不思議そうな顔をして俺の帽子を指差した。

「あら、どうして?ジョージが帽子を取ればいいじゃない。私はあなたたちの赤毛、綺麗で好きよ」

彼女は宥めるように言って目を細める。
喋るのは得意なはずなのに、声が出なかった。

赤毛はウィーズリー家の特徴だ。
うちは兄弟が多く、決して裕福ではないから髪色を見るだけでバカにされることも少なくなかった。
でも俺はこの赤毛も家族も大好きだし、誇りでもあった。
だからそれを隠そうとして帽子を被っているわけではないのだ。

でもそんなことを延々語る気は更々無く、かと言って本当の理由を喋るのも面倒。
渇いて引っ付く喉を軽い咳払いで引き剥がす。

「…実はさ、」

耳貸して、と言うと彼女の耳許に唇を寄せて小さく呟いた。

「新商品の開発中に失敗して、てっぺんハゲになっちゃったんだ」

言うなり相手は肩を震わせ口を手で塞いだので、俺も笑った。
二人でケラケラ笑いながら、俺は背中にフレッドの視線を感じていた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ