その他テニス
□●幼いときめき
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夕方で、遊ぶ子供も帰った砂浜。
制服のまま座り込んで俯いた黒髪を見つけた。
俺がバネさんを見間違える訳ない。
「バネさん、」
息を乱したままバネさんの隣に立つ。
驚いたのか一瞬肩を跳ねさせて、慌てて目を擦ると俺を見る。
「おう、なんだダビデかよ!」
その目は赤くて、鼻先もほんのり赤い。
俺が声かけるまで泣いていたのを物語っていた。
「バネさん、無理しないで」
弱々しく笑う彼を、そっと抱き締めた。
いつもの調子ならきっと俺は今頃蹴飛ばされてる。
でも、今も俺はバネさんを抱きしめたままだ。
「見てたのかよ…」
「…ごめん、見る気は無かったんだけど」
彼はぐす、と鼻をならしたまま何も言わない。
俺の腕の中で泣いてくれてたら嬉しい、なんて不謹慎かも知れないけど。
「バネさんには俺が居るじゃないっすか」
「バカダビデ…」
小さく呟いたバネさんの黒髪を撫でて。
普段見られない弱った姿に、俺の胸はきゅっとなった。
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