その他

□長い旅にでておりました
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中学最後をあんな形で終わらせ、高校に入れば親の意向で辞めた。そのことであの頃、親友と少しもめたころからもう十年経った。




私は親のあとをつぐために入った医学部を卒業し、親伝の病院で研修医として働いている。

それは思いのほか大変なことで、帰宅は日付が変わったころになる。





しかしなんの代わり映えもない。





ふと高校の卒業式を思い出した。
なにも変わらず、また会えて彼のくだらない話を聞ける。
そう思っていた
しかし彼は

"俺、ホントはある国の王やけん帰らな‥
じゃーなやーぎゅ"

そんなことをいって一度も振り向かずに去っていった。
その日から彼は誰からの連絡も受けなかった。


このことを思いだせば彼が今どこでなにをしているのかが心配になる。
策士に見えて実はただの子供だった彼はちゃんと生きてるのだろうか?
彼に伝えたいことがあったのに‥


「もう十年ですよ、仁王くん」



「おん、区切りよかろ?」



その声にハッとして後ろを振り返ればスーツを着た男
中学の頃よりも大人びた彼の銀髪は黒く染まっているがそれがさらに色気を増している

「おーいやぎゅー?」




「あ、貴方ドコへ行ってたんですか!!どれだけ心配したと思ってるんです!?」



するとあの頃と変わらない笑顔をこちらに向けて言った

「ちょっと旅という名の転勤じゃ」



「馬鹿じゃないですか?」



「おん」



「これからはこちらに?」



「おん、当分な」



「そうですか」



心底よかったと呟いた自分がいた
そして伝わらなかった言葉を伝える決心がついた



「あの、」「のぅ」


「お、お先に」


「いや続けてよかよ、多分同じことじゃき」










「好きです、昔から」「付き合って、今からずっと」






今度は二人で旅に出ます
(え?)(出始めに俺んち行くぜよ)(は?)(ほらいいから)




2009.10.8


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