その他p2

□赤いポストの憂鬱。
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5個の目覚ましよりも早く起きた。
それは俺にとって天地がひっくり変えるほどのことでさっさとリビングに降りていけば母親や義理姉に大層驚かれた

いつまでもオーバーリアクションで驚かれるのはうざいと思ったのでさっさと家を出る




朝早く人道りもない道にポツンと佇む赤いポストを手紙を投函するわけでもなくただぼんやりと眺めていた。
雨が降ったって、雪がちらついたってポストはその場にいて人数が計り知れないほど横切られる
それにポストの前に立つ、なんて電子化されるいまの世界ではごくたまにしかない
数時間後に来る郵便局員と触れ合うしかない日だってあるだろう



ヘッドホンをつけて音楽を流す、我ながらなんとも不毛な想像をしたと思った





「光!」



ハッと我に変えれば謙也さんで、ハァハァと息を切らしているところを見れば走ってきたのだろうと容易に考えついく



「はよーっす‥」



「なんでこんな時間におんのや!?」



「そないに驚かんでもえぇやないッスか、ただはよ起きただけッスわ」



親に続いてになるリアクションはため息もので、やれやれと口を滑らせたら叩かれた




「ひ、光がたまたまはよ起きた‥明日は槍でも降るんやないか!?」



「ほんまやな、」




突然介入してきた第三者の声。
それは聞き間違える筈もない部長の声だった



「し、白石!!おはようさん!」



「おはよう謙也」




今までのトーンとはまるで違う謙也さんの声が鼓膜を攻撃を受けた
おまけに謙也さんの視線は俺からはとうにはずれており部長へと向いている




「おはよう財前」



「ッス、」




軽く流して俺も謙也さんから視線を外した。
二人の会話を聞かないためにポケットに入った本体で音量をぐんと上げる
最初から謙也さんがこちらの方面に来ていること、というのを考えておけばよかった


俺は朝から会えたことで舞い上がったが所詮部長のため、俺はこの二人が揃うと蚊帳の外
視界にさえ横切りもしない存在になるのはいつものことだ








ふと、いまはもう通り過ぎたポストを思い出した







それはそこにある当たり前の情景
(回収時間を待つしか)(俺にはできない)(動けないんだから)






end
2010.04.19

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