FirstCode

□dark melodys
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都内某所…桜の華が咲き誇る広い静か公園で、一人の男の子が泣いていた。
「ふぇっ…えっ…うぇっ…ママぁ…」
どうやら母親とはぐれてしまったらしく、何度も母親を呼んでいる。
「ママ…ママぁ…うぁぁ…」
「…ママがどうしたんだ?」
誰かに声を掛けられ、涙や鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を上げる男の子。
そこには帽子を被った青年が、優しいアーモンドアイの瞳を向けていた。
青年は男の子の目線の高さに合わせて屈むと、よしよしと頭を撫でた。
「どうした?ママとはぐれちゃったのか?」
そう聞かれ、男の子はしゃくりを上げながら頷いた。
「そっか…大丈夫。ママすぐ来てくれるよ」
「ふぇっ…えっ…ほんと?」
「ほんとだよ…ほら、泣かない泣かない」
「うっ…ふぇ…うぇっ…」
再び泣き出す男の子。青年は軽くため息をつくと、周りを見て、立ち上がった。
「ひっく…おにぃ…ちゃん?」
スウ……

凛と咲いた桜その真下で もう一度あなたに出会いたくて
数字の配列のような人混み 何かを踏みしめてて先を急いでる
雑踏の中に忘れてた夢や希望 いつも側に居た誰かの笑顔
光浴びた風をはためかせて 暖かな息吹きに頬を染めて
凛と咲いた桜その真下でもう一度あなたに出会いたくて


ザアアア…

静かな公園に響く優しく甘いソプラノボイス。
それに合わせるかのように風が吹き、近くにあった桜を揺らした。
それが桜吹雪となり、尚も歌う青年を彩る。
まるで、青年の歌う歌が現実と化しているように…
その場にいた人々はただ青年の歌声に聞き入っていた。
「〜♪」
「太郎ちゃん!」
「ママ!」
歌い終わった頃、男の子の母親が姿を表した。
途端に男の子の顔は明るくなり、キラキラと輝きだす。
「ほら…ママが来たよ…行きな」
「ありがとう!お兄ちゃん!」
「…相変わらずいい声だな」
母親の元へ走っていく男の子を見送ると、青年の後ろから声がした。
「遅いよ景吾…」
「悪かったなリョーマ。お前の声に聞き入っていたんだぜ?」
景吾と呼ばれた青年は、リョーマの頭を撫でながらそう返事をするが、リョーマは嫌そうにその手を払いのけた。
「子供扱いすんな!」
「はっ!俺様から見ればリョーマはまだガキだぜ?」
「にゃろ…」
「行くぞ。遅れっとまた国光がうるせー」
軽く頭を叩かれ、歩き出す景吾。
リョーマは心の中で自分が遅れた癖にと悪態を尽きながら、その威厳に満ちた
背中を追った。
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