□※快楽指導 〜復習編〜
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 砦水没事件後、アイクとシノンを取り巻く空気は明らかに変化していた。二人の挙動は今まで通りなのだが、雰囲気がまるで違う。シノンは相変わらず憎まれ口を叩きながらも棘はなく、彼なりの優しさを漂わせていた。
 人間関係に敏感なある団員はいち早くそれを感じ取り、二人の間に何があったのかこっそり様子を伺ったり、最終的にはアイク本人に聞いてみたりした。アイクは曖昧な返事をするだけで何も教えなかったがその団員は、団員同士の仲がよくなったのはいいことだとそれ以上問わなかった。
 シノンは一度は新団長に反発し、傭兵団を離れた身である。戦場で再会した愛弟子の説得で再び団に身を置くことになったが、それでも暫くは未熟な団長をいけ好かない奴だと思っていた。アイクに対し数々の暴言を浴びせているところも目撃されている。
 嵐でシノンの部屋が使い物にならなくなったあの時も、彼はアイクの部屋を占拠しようとした。結局酷い態度を取ったと自覚し、当分二人で部屋を使うことになったのだが。
 部屋が無事修復されても、二人は互いに部屋を訪れていた。あの晩の続きをしたいからだ。顔には出さないが、二人とも毎回その時間を楽しみにしていた。シノンはアイクが自分の思い通りに育ってくれるのが嬉しく、アイクの方も未知の分野が啓けるということで喜びを感じていた。

 寝床への誘いは皆が集まりやすい食事の時に行うことになっていた。勿論言葉ではなく、目やちょっとした仕草を使う。微かに頷いたり、目が合った途端特定の方向に視線をずらすといった具合に。こうすることで関係を団員に悟られることなく夜を共にできた。犬猿の仲であった頃を知っている団員に今の関係を悟られるのは気まずく、恥ずかしいと思っていたのだ。
 夕食後は、食事当番以外はそれぞれの自室に戻るか、そのまま食堂に残って談笑することが多い。
 そんな中アイクはそそくさと部屋を抜け出すと、一人風呂場に向かった。その姿を見届けると、狙撃手は微笑しながら近くにいた相方と談話を始めた。

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