□※堕ちし歩哨の銃
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 帝国へ向かう途中で、アイク率いるグレイル傭兵団は砦に巣食う蛮族と野獣を蹴散らし、名も無き砦を制圧した。地図上にも記されていないその砦は誰によっていつ頃建てられたものなのか、検討もつかない。辺りは暗い森に囲まれ、鬱蒼と木々が生い茂るばかりだ。
 敵の波状攻撃が連日続いた上に、視界の悪い中での戦闘である。練度の高くなった傭兵団とはいえ、さすがに顔には疲れが浮かぶ。
 砦の防御力がどの程度あるか不安はあったが、ここ以外に夜露をしのげる場所は見当たらなかった。露営よりは安全性が高いだろうと判断し、今晩はここで休息をとることに決める。
 ただし、連合軍が支援をできる状態になくこちらの勢力の規模が小さいために、団員自ら歩哨の役割を担わなくてはならなくなった。
 最初の担当となったのは手が空いており、比較的余力もあるアイクとシノンだった。
それをアイクから告げられたシノンはあからさまに嫌な顔をした。
「この染みったれた場所で、よりによってなんで俺がアイク坊やと……」
絶対に厄介事を起こすんじゃねえぞ、と悪態をつきながら、シノンは厚い扉の奥に消えた。
 アイクも溜息を一つ吐くと、剣を担いで彼の背中を追った。

 見張りの最中でも、二人の仲は険悪に見えた。アイクはどことなく向けられる敵意を感じていたが、いつものように気づいていないふりをしていた。一方シノンの方は何かと溜息を吐いたり、落ち着きもなく腕や足を揺らしたりした。
「おい坊や、配置を考えた奴は誰だ」
「ティアマトだ。何か問題でも?」
やるせのない不満に、溜息だけが返ってきた。

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